内容紹介
「異物としてのスピノザ」、「暗号としてのスピノザ」 -スピノザは多くの哲学者たちを当惑させ、また魅惑してきました。激動の十九世紀フランスにおけるスピノザが引き起こした混乱を通じて、「スピノザ」「十九世紀フランス」の両者に光を当てたいと思います。
著者からのコメント
現代であれば、スピノザ哲学の意義を否定する人はいません。そんな人がいたら、逆にその哲学的センスを疑われることにすらなるかもしれません。この「世界」をミニマムな形で説明しきろうとするその哲学は、尽きせぬ魅力をたたえています。
しかし、いつもそうだったわけではありません。それどころかスピノザはむしろ、否定すべきもの、唾棄すべきものとすらされてきたのです。その名を口にするのも忌まわしい、という扱いすら受けました。ドゥルーズやアルチュセールがスピノザを褒めたたえる光景の真逆です。
なぜこんな転換が起きたのか? この本は、十九世紀フランスを舞台に、その評価の変貌を追うものです。これまでほとんど全くといっていいほど論じられてこなかったテーマですが、「十九世紀フランスにおけるスピノザ受容」を見ることで、現代まで通じるスピノザ解釈の特徴とその問題とが見えてきます。また、その作業を通じて、スピノザ哲学の本来的意義といったものをも考えるようにと、読者は誘われることでしょう(そうなることを執筆者一同期待しています)。
思想史・知識社会学的分析が、哲学的思索の一助となるような書物を目指しました。もちろん、それがうまくいっているかどうかの判断は、皆さまにお任せせねばなりません。
外部リンク
〔出版社〕岩波書店の紹介ページ