内容紹介
本書は、中央大学政策文化総合研究所の研究プロジェクト「東アジアにおける文学の社会的役割についての比較研究」の研究成果である。東アジアの近代文学が社会にどのような影響を与えたか、日中韓の研究者が多様な角度から検討した15点の論文より構成されている。著者(水溜)は、第Ⅲ部第8章「アイヌ民族における同化と民族主義―武田泰淳『森と湖のまつり』」を執筆した。
著者からのコメント
『森と湖のまつり』(1958年)は、武田泰淳(元北海道大学法文学部助教授です)が執筆した同時代の北海道を舞台とする長編小説です。単行本の出版とほぼ同時に映画化されましたが、高倉健演じるアイヌの青年と香川京子演じる和人の女性の恋愛物語が盛り込まれているせいか、ヒットしたようです。原作はアイヌ民族の問題を正面から扱った、かなりの問題作であり、ポストコロニアル文学研究において注目すべき作品ですが、なぜか先行研究はあまり多くありません。本論文では、武田が、アイヌ民族の向かうべき方向性を同化主義と民族主義の二者択一として提示していること明らかにしつつ、その背景と問題点について論じました。
外部リンク
〔出版社〕中央大学出版部の紹介ページ