2021.01.31

社会のなかの文学

著者名:
広岡 守穂(編著)
水溜 真由美(分担執筆)
文学院・文学研究院教員:
水溜 真由美 みずたまり まゆみ 教員ページ

内容紹介

本書は、中央大学政策文化総合研究所の研究プロジェクト「東アジアにおける文学の社会的役割についての比較研究」の研究成果である。東アジアの近代文学が社会にどのような影響を与えたか、日中韓の研究者が多様な角度から検討した15点の論文より構成されている。著者(水溜)は、第Ⅲ部第8章「アイヌ民族における同化と民族主義―武田泰淳『森と湖のまつり』」を執筆した。

著者からのコメント

『森と湖のまつり』(1958年)は、武田泰淳(元北海道大学法文学部助教授です)が執筆した同時代の北海道を舞台とする長編小説です。単行本の出版とほぼ同時に映画化されましたが、高倉健演じるアイヌの青年と香川京子演じる和人の女性の恋愛物語が盛り込まれているせいか、ヒットしたようです。原作はアイヌ民族の問題を正面から扱った、かなりの問題作であり、ポストコロニアル文学研究において注目すべき作品ですが、なぜか先行研究はあまり多くありません。本論文では、武田が、アイヌ民族の向かうべき方向性を同化主義と民族主義の二者択一として提示していること明らかにしつつ、その背景と問題点について論じました。

ISBN: 9784805714287
発行日: 2021.01.31
体裁: A5判・428ページ
定価: 本体価格4,900円+税
出版社: 中央大学出版部
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

第I部 文学と社会
第1章 文学が映し出す大衆の政治観
第2章 『換菓篇』の「不敬」事件
第3章 日本近代文学におけるメディアの勢力
第4章 児童書統制と戦時下の児童書出版の実態
第II部 世界に広がる日本語の世界
第5章 世界文学としての日本語詩
第6章 中国のネット小説とその中の「日本」
第7章 西田季子『歌集やまばと』をめぐる旅
第III部 主題の熟成
第8章 アイヌ民族における同化と民族主義―武田泰淳『森と湖のまつり』(水溜真由美)
第9章 小田実『玉砕』の射程
第10章 松本時代の木下尚江
第11章 福永武彦『風土』の「時空間」
第12章 田中智学の日本国体の論説と宮沢賢治に対する影響
第IV部 文学が社会を変える
第13章 ユン・ヒョンソクの「良い日」は韓国に訪れたか
第14章 中国のエミリー・ディキンソン? 余秀華について
第15章 フェミニズムと文学の普遍性