内容紹介
数学者と哲学者が9年にわたって一文一文一緒に書いた書物。「現実」についてわれわれがあたりまえにもっているイメージや捉え方を、根本的に変革し更新していくことを提案している。「現象学」と「圏論」を手がかりに、「現実」についての思考を実体論から解放し、「自由」の方から現実を捉えなおす可能性を開く。
「脳と意識の研究を行う私の科学観に衝撃を与える内容だ。」(モナシュ大学准教授・土谷尚嗣[神経科学])
著者からのコメント
数学者の西郷甲矢人氏との長年にわたる対話から生まれた書物です。この仕事を通して、私にとっての数学観は大きく変わりました。そして、自分が研究してきた「現象学」と呼ばれる哲学的思考が、いかに本質的な意味で(表面的な意味でなく)「数学的」であるのかに気づかされました(現象学の創始者フッサールが最初数学者として出発したこともおそらく関係しているでしょう)。
この書物でわれわれが示そうとしているのは、量子論や圏論をはじめとする現代科学・現代数学の最先端の知見を考慮するなら、「現実」についてわれわれが素朴に抱いているイメージは大きく変わらざるをえないということです。しかしその新しい現実の姿は、実は意外なものではなく、われわれが心の底では馴染んでいるものなのかもしれません。「自由」を基調とするそのあり方が、遠く仏教の指し示すものとも似ていることは、そのことを示唆しているようにも思えるのです。
外部リンク
〔出版社〕筑摩書房の紹介ページ