2020.03.27

エゴドキュメント歴史学

著者名:
長谷川貴彦(編)
文学院・文学研究院教員:
長谷川 貴彦 はせがわ たかひこ 教員ページ

内容紹介

日記や手紙、回想録など、一人称で綴られた史料への関心やその扱い方は、フェミニズムや現代思想、文学理論等の影響を受けながら大きく変容を遂げてきた。魔女裁判の告白書、遊女の日記、前線兵士の手紙など……多彩なエゴ・ドキュメントを専門家たちが新たな文脈で読み解く。理論と実践を総合した本格的な共同研究。史料論、歴史学の方法論としても必携の1冊。

著者からのコメント

言語論的転回以降の理論的な地平を踏まえて、歴史学の本分でもある実証主義的な姿勢を貫くにはどうしたらよいのか。とかく矛盾・対立するものとして語られがちな歴史学における理論と実証の問題について思案していたときに出会ったのが、エゴ・ドキュメントをめぐる研究の潮流であった。実際、エゴ・ドキュメント研究とは歴史理論の省察であると同時に、具体的な史料を用いた歴史実践でもある。個々の論文は読み物としても興味深いものがあり、多くの読者を得られることを期待している。

ISBN: 9784000223034
発行日: 2020.03.27
体裁: A5判・284ページ
定価: 本体価格3,000円+税
出版社: 岩波書店
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

序 章 エゴ・ドキュメント研究の射程
第1章 浮動するエゴ、もう一つのエゴ、創られるエゴ――魔女ベレッツァ・オルシーニの審問記録と手記(一五二八年)より
第2章 エゴ・ドキュメントの「厚い」読解――ラテンアメリカ史研究の経験から
第3章 日本近世における自己語りの諸相――「我」と天道の間で …………… 若尾政希
第4章 オーラルとエクリの間あわいからの創造――啓蒙期ロレーヌの作家グラフィニ夫人の場合
第5章 法律家の手紙―― 一九世紀初頭のイングランドにおける日常的な法の利用
第6章 遊女の「日記」を読む――嘉永二年梅本屋佐吉抱え遊女付け火一件をめぐって
第7章 感情と情報リテラシーが交差するところ――噂、ニュース、エゴ・ドキュメント
第8章 エゴ・ドキュメントをめぐる後期ソ連の歴史実践