2020.02.25

近世蝦夷地在地社会の研究

著者名:
谷本晃久(著)
文学院・文学研究院教員:
谷本 晃久 たにもと あきひさ 教員ページ

内容紹介

近世の蝦夷地(北海道・南千島・サハリン南部)をフィールドに、場所請負制度のもとに機能した地域社会を「近世蝦夷地在地社会」と捉え、その構造や特質を、文献史学の手法で明らかにする。先行研究の整理をふまえ、交易や宗教などを手掛かりに実証的に分析した論集。その際、アイヌ史叙述の動向を意識するとともに、「浜中」と呼ばれた和人コロニーの姿をも射程にいれ、その両者間に生起した社会の個性にも目を向けた。

著者からのコメント

書名にある「近世」とは、日本でいう江戸時代を意味します。「蝦夷地」とは、「北海道」設置以前に用いられていた名称です。つまりこの本は、江戸時代の北海道に関する内容で構成されている、ということになります。

この本のカバーのオモテから背表紙にかけては、松前の隣町である福島町の旧家に伝わった蝦夷地図がデザインされています。地図の伴う使用痕からは、江戸時代の松前地方に、北海道・サハリン・千島を認識の一環に含んだ日常のあったことが彷彿とされます。また、カバーのウラに載せた写真(下記画像参照)は、本学附属図書館の所蔵する明治初年の磯谷(現:寿都町北部・蘭越町)を支配した米沢藩の藩士による記録の付図で、漁業に勤しむアイヌと和人の漁民の姿が描かれています。

山田民弥『恵曽谷日誌』参より(明治3年序、本学附属図書館北方資料室所蔵)

この本では、近世の蝦夷地に営まれた暮らしの場=「近世蝦夷地在地社会」の個性のありかを、宗教や交易を切り口に、和紙に墨で書かれた和文の古文書を素材として、個別実証的に考えてみました。本文は専門的内容ではありますが、高名な装幀者の菊地信義氏が手がけて下さったカバーから、その雰囲気の一端なりとも感じ取って頂けますならば幸いです。

ISBN: 9784634520424
発行日: 2020.02.25
体裁: A5判・480ページ
定価: 本体価格9,000円+税
出版社: 山川出版社
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

序章 本書の目的と構成

第Ⅰ部 近世蝦夷地の捉え方
 第1章 近世の蝦夷
 第2章 近年の〝アイヌ史〟研究管見――近世文献史学研究を中心に――
 第3章 「国家」史的観点からみた近世アイヌ社会
 第4章 〝近世アイヌ史〟を取り巻く国際的環境
 第5章 北の「異国境」――幕府外交の転換とアイヌ史上の画期――

第Ⅱ部 在地社会のなかのアイヌ集団
 第6章 近世蝦夷地「場所」共同体をめぐって
 第7章 アイヌの「自分稼」
 第8章 近世アイヌの出稼サイクルとその成立過程――西蝦夷地「北海岸」地域を事例として――
 第9章 アイヌの「自分取出稼」――幕末期、西蝦夷地ソウヤ場所モンベツ領の事例――

第Ⅲ部 在地社会のなかの宗教と信仰
 第10章 宗教からみる近世蝦夷地在地社会
 第11章 蝦夷三官寺と幕府の宗教政策
 第12章 幕末期、蝦夷地への寺院建立と開拓政策
 第13章 幕末期、蝦夷地への寺院建立と在地社会――西蝦夷地フルヒラ禅源寺建立と浜中集団をめぐって――
 第14章 〝鰊獲りの禰宜さん〟考――近世の蝦夷地支配と神道系宗教者――

終章 本書の成果と課題