内容紹介
幕末明治期にロシアから伝わり、日本ではあまり知られていない正教会。本書は、数的にマイノリティでありながら「日本ハリストス正教会」として定着した過程を、死者の弔いから描き出しています。Ⅰ部で歴史・儀礼・死生観などを概観し、Ⅱ部ではフィールドワークをもとに、クリスチャンである死者がいかに家の先祖となるか、家庭祭壇には何を置きその前でどう祈るかなど、具体的な弔いの実践を検討しています。
著者からのコメント
私が日本ハリストス正教会(以下、日本正教会)と出会ったのは、2016年の降誕祭の時でした。教会の入口に置かれた、死者のためのお祈りを司祭にお願いする際に信徒が書く「死者の記憶」と題された短冊を見て、これは一体なんだろう?と思ったことを今でもよく覚えています。この素朴な疑問をきっかけとして、その後の修士課程・博士課程・ポスドク時代と、足掛け10年ほどをかけて日本正教会の調査を続け、本書を書き上げました。
本書は、正教徒がマジョリティではないこの社会の中で、日本人信徒がいかに日本文化と折り合いをつけ、工夫しながら祈ってきたかを、特に葛藤の起きやすい死者の弔いの実態を描くことでまとめたものです。これらのテーマは、隣に住む異なる価値観を持つ他者を知りたい、他者とともに生きるとはどういうことか、という、私が宗教学を学ぶうえで一貫して抱いてきた問題意識につながっています。
読者の皆様には、少しでも日本正教会を知り、またその実践の面白さを知っていただければうれしく思います。
〈刊行後の反響〉
書評
- 上智大学グリーフケア研究所紀要『グリーフケア』第14号(2025年) 評者・大村哲夫氏
受賞
- 印度学宗教学会賞 2026年度受賞
外部リンク
〔出版社〕春風社の紹介ページ
