内容紹介
本書は、慶應義塾図書館および慶應義塾大学文学部中国文学研究室に所蔵される中国演劇の戯単(芝居番付)について、図版とともに論文3点を加えて刊行するものである。これらの戯単は、奥野信太郎・慶應義塾大学元教授が収集したもので、中国でも現存例がほとんど確認されていない「光緒年老戯単」をはじめとして、極めて貴重なコレクションである。
本書によって、奥野先生の収集した戯単が公開されるとともに、その随筆についても戯単との関連で新たな光が当てられることになるだろう。(中里見敬「後記」より)
著者からのコメント
「戯単」とは、芝居の番付、つまり公演パンフレットのことです。本書は、中国文学者・随筆家として知られる奥野信太郎(元慶應義塾大学中国文学科教授)が、1936年から38年にかけて北京に留学した際、現地で収集した戯単を図録として公開するものです。
収録された戯単の中には、清代光緒年間のものなど、中国国内にもほとんど残されていない貴重な資料が含まれており、中国の研究者からも注目を集めています。また、奥野信太郎がこよなく愛した京劇の名優・小翠花の戯単が数多く収められている点も、本書の大きな見どころです。
女形の役者であった小翠花は、纏足した女性の歩き方をみせる演技に長けていました。拙稿では、そうした小翠花の演技術の変遷を、かれを取り巻く20世紀中国社会の変化とあわせて論じています。
随筆家としても名高い奥野信太郎は、すでに失われた京劇の舞台や、かつての北京の劇場風景を生き生きと描き残しています。奥野が集めた戯単とともに、もう見ることのできない京劇の世界を味わっていただければ幸いです。
