2025.3.31

日本サブカルチャー危機

死と恐怖の表象史
著者名:
押野 武志 横濱 雄二 諸岡 卓真 高橋 啓太 井上 貴翔 編著
文学院・文学研究院教員:
押野 武志 おしの たけし 教員ページ

内容紹介

ミステリ、ゲーム、映画、アニメ、マンガなどにおいて、第二次世界大戦や東日本大震災などの実際に起きた「危機」、あるいは物語上のクローズドサークルや世界の終わりなどの架空の「危機」はどう扱われたのか。また、そうした「危機」に対して、どのような想像力によって、応接しようとしたのか、あるいは応接できなかったのか。日本サブカルチャー史における、死と恐怖をめぐるジャンル横断的評論集。

著者からのコメント

日本において一九二〇年代に成立した「死」や「恐怖」を素材とするミステリは、二〇世紀以降の危機的事象(疫病、関東大震災、戦災、阪神淡路大震災、東日本大震災、原発事故…)をどのように受け止め応答しようとしたのかを究明する科研プロジェクト「日本近現代ミステリにおける危機表象の史的研究」(基盤研究C)の成果の公開。
二部構成とし、第一部は、ミステリにおける危機に対する想像力の諸相を通史的に探った。第二部は、ミステリに限定せず、ジャンル横断的に広く現代日本サブカルチャーにおける危機表象の諸問題を論じた。
過去の危機的事象との反映論的な視座だけでなく、ミステリ、マンガ、アニメ、映画といったそれぞれのメディア特性を生かした危機表象の固有性も追究したつもりである。
押野武志編著『日本サブカルチャーを読む―――銀河鉄道の夜からAKB48まで』(北海道大学出版会、二〇一五)の姉妹編。
「危機」という言葉が時代のキーワードになって久しい。ただ、「危機」をことさら煽ることなく、「危機」について冷静に思考し、来るべき「危機」に処するための手がかりに本書がなれれば本望である。

 

ISBN: 9784832934207
発行日: 2025.3.31
体裁: 四六判・264頁
定価: 3,500円+税
出版社: 北海道大学出版会
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

まえがき 諸岡卓真

 

Ⅰ 危機の時代のミステリ――災害・狂気・戦争・閉鎖空間
転位/回避される〈危機〉:江戸川乱歩と海野十三における関東大震災の影 井上貴翔
神経衰弱と〈探偵小説〉:小酒井不木「懐疑狂時代」論 鈴木優作
衛生とミステリ:〈浴室の死体〉というモチーフ 小松史生子
“捏造”された市と戦災:松本清張『砂の器』を読み直す 高橋啓太
災害/原発ミステリの諸相:関東大震災から東日本大震災まで 押野武志
信頼する犯人:今村昌弘『兇人邸の殺人』論 諸岡卓真

 

Ⅱ 世界のエッジ:危機表象のフロンティア
ビデオゲームにおける(危機の)表象:『ダークソウル』を例として 榊 祐一
「決定」をやりなおす:黒沢清『回路』について 川崎公平
描かれる他者、描かれない他者:「火垂るの墓」論 横濱雄二
セカイ系と「危機」の平成史:言説と表象の変遷で辿る30年渡邉大輔
災厄の記憶と、その歪み:東日本大震災後のアニメーションと純文学を例に 藤田直哉
はっきりしない危機表象:森泉岳土の諸作について 阿部嘉昭

 

あとがき 押野武志