2024.5.31

ロシア極東シベリアを知るための70

エリア・スタディーズ 203
著者名:
服部 倫卓 吉 田睦 編著

文学院・文学研究院教員:
服部 倫卓 はっとり みちたか 教員ページ

内容紹介

明石書店の「エリア・スタディーズ」のシリーズは、基本的に国ごとの入門書であるが、本書ではロシアの中の極東とシベリアに徹底的にフォーカスし、敢えて辺境からロシアという国の本質を読み解くということを試みている。シベリア・極東の地理と自然、歴史、民族と文化、現代の諸問題、ロシア東部を構成する諸地域を論じた70章から構成されている。

著者からのコメント

明石書店の「エリア・スタディーズ」のシリーズは、基本的に、国別の入門書となっています。本書のように、国の中の一部の地域だけを徹底して掘り下げた例は、まだ多くないはずです。ロシア極東・シベリアは、地理的にこそ広大ですが、今日この辺境地帯には全ロシア国民の2割ほどが住んでいるにすぎません。それでも、本書があえてロシアの東部に徹底的にフォーカスしたのには、もちろん理由があります。それは、ロシアをロシアたらしめているのはシベリアであり、さらにその延長上にある極東であるとの思いからです。言い換えれば、シベリア・極東は、ロシアのすべてではありませんが、それがなかったら、ロシアはまったく違う国になっていたのではないかと思われるのです。ぜひ、本書を手に取って、ロシアという大いなる謎を、あえてシベリア・極東という辺境から読み解いていただければと思います。

ISBN: 9784750354682
発行日: 2024.5.31
体裁: 四六判・400頁
定価: 2,000円+税
出版社: 明石書店
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

Ⅰ シベリア・極東の地理と自然
第1章 シベリア・極東の起源と領域――時代とともに揺れ動く地理のイメージ
第2章 「シベリアの真珠」 バイカル湖――その瞳は青いままでいられるか
第3章 シベリアの大河――レナ・エニセイ・オビと暮らす人たち
第4章 カムチャッカと千島列島の火山――世界屈指の活動的火山群
第5章 オホーツク海を育むロシア極東の河川――日本にめぐみをもたらす魚附林
第6章 タイガ・ツンドラ・永久凍土――シベリアを特徴づける自然環境
第7章 地球温暖化とシベリア――近年の気候変動と環境への影響
第8章 シベリア・極東の希少動物――アムールトラやアムールヒョウの個体数は回復
第9章 日本とシベリアを繋ぐ渡り鳥――先住民・行政・研究者が協働するコクガン市民調査
第10章 シベリアの森林火災――凍土上のゾンビファイアー
【コラム1】シベリアの淡水魚とその利用――ロシア人と先住民の利用法

 

Ⅱ シベリア・極東の歴史
第11章 シベリアの人類史と多様な民族形成――民族的・文化的多様性の起源
第12章 ロシア極東と北海道の先史文化交流――ホモ・サピエンスの定着化からオホーツク文化形成まで
第13章 古代・中世のロシア極東と北海道――極東史から見たアイヌ民族の形成
第14章 シベリアの地域情報収集と地図化――ロシアによるシベリア・極東進出の歴史①
第15章 ロシアの近代学術調査と探検――ロシアによるシベリア・極東進出の歴史②
第16章 極東地方南部への移住――コサックと古儀式派教徒の進出
第17章 ロシアの北太平洋進出とアラスカ――毛皮資源と新天地を求めた人々
第18章 日露の出会いとなったシベリア・極東――漂流民が端を開いた両国関係
第19章 流刑地としてのシベリア・極東――ロシアの「島」
第20章 日露戦争から日露同盟へ――対立から戦略的互恵関係へ
第21章 シベリア出兵から日ソ国交樹立へ――関係再構築までの苦闘
第22章 満洲事変から日ソ戦争まで――スターリンとの対決
第23章 「シベリア抑留」の始まりと終わりの地――日本人兵悲劇の舞台、ロシア極東
第24章 サハリン残留朝鮮人とサハリン残留日本人――〈樺太〉と〈サハリン〉を生きた人々

 

Ⅲ シベリア・極東の民族と文化
第25章 ロシア文学に描かれたシベリア――探検と流刑のトポス
第26章 極東・シベリアの先住少数民族――民族の分類・分布
第27章 極東・シベリアの先住少数民族の言語――アルタイ諸語
第28章 カムチャッカ半島の先住民言語――18世紀から現在までの言語分布の変遷
第29章 極東・シベリアの先住少数民族の生活・生業様式――自然・社会環境変化の中で
第30章 シベリア(先住)諸民族における口承文芸――語られた文芸の記録叢書
第31章 イスラームのシベリアと仏教のシベリア――その歴史と現在
第32章 特徴的なロシア人ローカル・グループ――コサック、古参住民、古儀式派教徒
第33章 シベリアのポーランド人・ウクライナ人・ベラルーシ人――19世紀末から20世紀初頭にかけての自由移民

 

Ⅳ 現代のシベリア・極東の諸問題
第34章 シベリア・極東をめぐる国際関係――「東方シフト」が抱え込むいっそうの困難
第35章 シベリア・極東の石油・ガス――ロシア経済を支える貴重な資源
第36章 シベリア・極東は資源の宝庫――ダイヤモンド、石炭、金、水産物
第37章 プーチンの極東開発――覚悟と信念の四半世紀
第38章 シベリア・極東を舞台とした日露経済協力――重大な岐路を迎えた極東ビジネス
第39章 ロシア極東の漁業と日露漁業関係――押し寄せる時代の荒波
第40章 軍事面から見たシベリア・極東――配備兵力、核戦略、軍需産業
第41章 日露間の北方領土問題――「0島返還」路線に戻ったプーチン政権
第42章 アジアシフトで変わるシベリア鉄道――増え続ける貨物輸送
第43章 シベリア・極東の人口減少問題――90年代の混乱と2000年代の安定化
第44章 ロシアの北極政策――プーチン政権下の急展開
第45章 シベリア・極東観光案内――大自然の宝庫、多様な民族文化と歴史
第46章 ウクライナ侵攻とシベリア・極東――「東方シフト」は加速するか
【コラム2】「シベリアの呪い」とは何か?
【コラム3】東京農業大学の実験的プロジェクトから見えた可能性
【コラム4】北海道・極東ロシア間交流――北方領土の旧居住者の語りから

 

Ⅴ シベリア・極東の諸地域
シベリア・極東諸地域基礎データ・地図
第47章 チュメニ州はシベリアの門――石油・ガス産地の2つの自治管区は実質独立
第48章 ハンティ・マンシ自治管区はロシア随一の産油地域――先住民の社会にも変化
第49章 世界屈指の天然ガス産地 ヤマル・ネネツ自治管区――資源開発と先住民の生存
第50章 山と湖の景勝地 アルタイ共和国――ロシアらしからぬ山岳地帯
第51章 かつては独立国だったトゥバ――トゥバ人がロシア人よりも多数を占める共和国
第52章 遊牧民国家興亡の地 ハカス共和国――現代の主産業は水力発電とアルミ精錬
第53章 自然が人を呼び寄せるアルタイ地方――背後に山脈が控える豊かな大地
第54章 貴金属・非鉄金属で栄えるクラスノヤルスク地方――大河エニセイ流域に広がる広大な地域
第55章 日本と歴史的関係の深いイルクーツク州――漂流民から木材企業まで
第56章 石炭産業の中心地 ケメロヴォ州――300年の歴史を誇るクズバス炭田
第57章 ソ連とともに生まれたノヴォシビルスク州――学術都市建設とその後
第58章 かつてのシベリア「首都」 オムスク州――その歴史的変遷
第59章 教育と科学の街 トムスク州――最古であり、最先端
第60章 民族文化を維持しようとするブリヤート共和国――ロシアとアジアが交差する地
第61章 サハ共和国は世界最大面積の地方行政単位――凍土とダイヤと民族文化の地
第62章 地方政治を色濃く映すザバイカーリエ地方――宗教や歴史が凝縮する空間
第63章 火山・漁業・原潜基地のカムチャッカ――人口希薄な戦略的要衝
第64章 変化を見せる沿海地方――プーチンのアジア戦略の最前線
第65章 潜在能力を秘めたハバロフスク地方――極東主都の座を失う
第66章 存在感を増すアムール州――中国、大豆、メガプロジェクト
第67章 スターリン体制の暗部が刻まれたマガダン州――コルィマ街道の悲劇
第68章 サハリン州をめぐるさまざまなボーダー――サハリン島とクリル諸島
第69章 世界史が影を落とすユダヤ自治州――ソ連版「約束の地」
第70章 最果てのチュクチ自治管区――生き残りをかけて