「書香の森」企画展示大本 書票の世界

大本 靖 —書票の世界—

書票(蔵書票)は、本の見返し部分などに貼付して、その本の持ち主を明らかにするための小紙片。エクスリブリス(Exlibris)は「だれそれの蔵書から」という意味のラテン語である。

書票が誕生したのは15世紀ドイツであるが、その背景には製紙技術の発達と、グーテンベルクの発明した活版印刷によって本の大量生産が可能になったことがある。初期には木版が主流であったが、16世紀になるとアルブレヒト・デューラー、ルーカス・クラナッハ、ハンス・ホルバインなどの巨匠が書票を手がけ、エングレービングやエッチング技法を使用した精巧なものが作られるようになり、やがてヨーロッパ中に広まっていった。

日本では本の持ち主を示すものとしては蔵書印が用いられてきたが、プラハ出身の画家エミル・オルリックによって1900年(明治33年)に文芸誌「明星」に紹介されて知られるようになり、画家、版画家によって版画仕立ての書票が手がけられるようになった。著名な芸術家では竹久夢二や棟方志功、武井武雄などが制作している。1922年には「日本書票協会」が設立されており、現在も研究や収集の中心となっている。

大本は1964年から木版での制作をはじめ、作品集も刊行している。多くは友人、知人のために制作していたが、必ずしも蔵書者とは直接関係のない、高山植物や蝶などの大本好みのモティーフがよく用いられ、小さくはあるが凝縮した大本の世界が描き出されている。

1982年には、第19回世界書票大会(8月18日〜22日)に日本代表として参加するためにイギリスを訪問。オックスフォード大学近代美術館で実技講座を担当している。

1992年には、札幌で開催された第24回世界書票大会(8月31日〜9月3日)の実行委員長をつとめた。

下段右から2番目の書票と↓の絵画は同じモチーフを使用している

展示作品目録

票主 制作年 図柄
志茂 太郎 ’81 志茂氏像
平川 次子 ’81 イワキキョウ

四居 靖彦

’82 雪のエゾマツ
イギリス館 ’82 枯木と水バショウ
L. NECHWATAL ’83 シオウギアヤメ
H. WESE ’84 昿野と蝶
坂本 一敏 ’85 河口にハマナス
土屋 文夫 ’85 湿原
山下 正  ’85 ナナカマドに樽前山
内田 晶子 ’86 グスベリ
佐藤 義人 ’86 スイセン
山口 博男 ’87 キバナシャクナゲ
八巻 勇 ’89 旭岳にハクサンイチゲ
猿田 耕治 ’91 ハマナスの実
佐藤 英治 ’92 ライラック
HILDE CARD ’92 大雪山にエゾキスゲ
塩田 英明 ’92 神仙沼
佐藤 安正 ’92 汽車とエゾ富士
安田 寿一 ’92 石庭に椿
大堰 幹夫 ’98 流氷
川元 栄一 ’98 秋の道庁
笹川 太朗 ’98 春の時計台
新宮 康夫 ’98 ワタスゲ
原 滋 ’98 ヨツバシオガマ
磯辺 可衞 ’98 虹の北アルプス
太田 正孝 ’99 コマクサ
中西 千尋 ’99 丹頂づる
佐藤 友泰 ’99 イワブクロ
門田 和彦 ’00 ハクサンイチゲ
関根 文庫 ’02 ガバイロシジミ

大本 靖

大本靖の作家略歴については、以下の紹介ページをご覧ください。