内容紹介
日本が誇る世界的な映画作家・黒沢清監督の、アレゴリー的な想像力に着目して、その作品を全体的に分析した、新しい角度からのモノグラフ研究です。その一方でアレゴリーに関わる記述全体が、独自のアレゴリー論にもなっています。
著者からのコメント
黒沢清監督作品を画面分析する際には、ショットの運動、人物の運動の細かい描写がしいられますが、それをいろいろなかたちで追究してみました。そこに現れる「リアリズムではないリアル」を、カフカ、ベンヤミン等の文学領域からまずは援用分析しながら、新たに映画のみに適用できる「運動アレゴリー」の概念を創出、これにより、黒沢作品のカッティングに通じる映画的な黒沢清論を実現できたのではないかと考えています。序章・終章を含めると全9章の構成ですが、注記部分や本文の細部にも、章題にはない多くの黒沢清作品の分析を盛り込んだ結果、網羅的な全体論を仕上げました。キーワードは、「運動」「空間」「美女」「機械」「身体」「メランコリー」などで、従来、「恐怖」のみに傾きがちな黒沢清作品の分析に、一石を投じました。