2019.03.05

黒沢清、映画のアレゴリー

著者名:
阿部嘉昭(著)
文学院・文学研究院教員:
阿部 嘉昭(名誉教授) あべ かしょう

内容紹介

日本が誇る世界的な映画作家・黒沢清監督の、アレゴリー的な想像力に着目して、その作品を全体的に分析した、新しい角度からのモノグラフ研究です。その一方でアレゴリーに関わる記述全体が、独自のアレゴリー論にもなっています。

著者からのコメント

黒沢清監督作品を画面分析する際には、ショットの運動、人物の運動の細かい描写がしいられますが、それをいろいろなかたちで追究してみました。そこに現れる「リアリズムではないリアル」を、カフカ、ベンヤミン等の文学領域からまずは援用分析しながら、新たに映画のみに適用できる「運動アレゴリー」の概念を創出、これにより、黒沢作品のカッティングに通じる映画的な黒沢清論を実現できたのではないかと考えています。序章・終章を含めると全9章の構成ですが、注記部分や本文の細部にも、章題にはない多くの黒沢清作品の分析を盛り込んだ結果、網羅的な全体論を仕上げました。キーワードは、「運動」「空間」「美女」「機械」「身体」「メランコリー」などで、従来、「恐怖」のみに傾きがちな黒沢清作品の分析に、一石を投じました。

ISBN: 9784864881654
発行日: 2019.03.05
体裁: B6判・360ページ
定価: 本体価格3,600円+税
出版社: 幻戯書房
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

序章 アレゴリーについて
第一章 代理と交換―『神田川淫乱戦争』『ドレミファ娘の血は騒ぐ』
第二章 復讐の寓意化―『蛇の道』
第三章 罹患と留保―『CURE』
第四章 選択と世界―『カリスマ』
第五章 転写と反復の機械―『LOFT』
第六章 人間の擬人化、隣接と類似―『クリーピー・偽りの隣人』
第七章 二重の身体、メランコリカー―『散歩する侵略者』
終章 映画のアレゴリーについて