内容紹介
2017年の春から初冬に書いた、自分としては長めの詩篇群を集成しました。各詩篇では、ひらがなを多用し、滔々と流れる時間が、いつしかべつの時間に辿りつくことを意図しています。秘かに織り込まれたズレと、ことばの説明要素の足りなさが、むしろ詩篇の容積を増やしていると認めていただいたうえで、最終的には詩集全体の時間が「永遠」に向かっているという実感が読者に生じれば、作者冥利につきます。
著者からのコメント
「現代詩手帖」2018年11月号で拙著『詩の顔、詩のからだ』につき永方佑樹さんが書いてくれた評のように、詩壇では私の詩作と詩論が相互照応の関係にあると考えられているようです。となると、この詩集を詩論的に解く鍵も、私の詩論用語「換喩」「減喩」ということになるのかもしれません。やや難解ですが、優れた詩論家・宗近真一郎さんがこの詩集に寄せられたオビ文を以下に引用しておきます。《うすく、すくなく、ちいさな不作為の深度から世界を透過する啓示的音律が到来する!/ひらがなの還元力と減喩的排中律が交叉する詩語の冒険的な更新。》。なおブックデザインを手がけたのはまだ若い矢崎花さんという方で、とても意欲的な手法を駆使しています。デザイナーが詩を解釈し、詩の作者と寄り添うようにコラボする。これは私としては初めての経験で、とても嬉しいことでした。乞われて、北海道の版元からの初めての詩集出版となりました。