2018.02.26

〈原作〉記号学

日本文芸の映画的次元
著者名:
中村 三春(著)
文学院・文学研究院教員:
中村 三春 なかむら みはる 教員ページ

内容紹介

原作のある映画は、オリジナルに対する第二次的な創作であるはずだが、にもかかわらず、かけがえのない固有性をもって観客に迫る。1950年代から現代に至る日本映画の中から、『雨月物語』『近松物語』『雪国』『夫婦善哉』『山びこ学校』『夜の鼓』『或る女』『心中天網島』『南京の基督』『薬指の標本』『神の子どもたちはみな踊る』などの作品を対象として、そのような原作現象の理論的な本質と表現の諸相とに肉迫する。

著者からのコメント

3年間×2回に亙って展開した科研費研究の成果を中心として、これまで主に文芸を論じてきた著者が初めてまとめた映画の専門書です。第一部「〈原作現象〉の諸相」では、映画の原作とは何かを種々相に応じて分類し追究しています。第二部「展開される〈原作〉」では、リアリズム問題や地政学的な見方も交え、より幅広い作品を取り上げています。原作の分析と映画の解釈、それに第二次テクストの理論的な側面も含め、大冊ではないものの盛りだくさんな内容となっています。これを契機に今後もこの分野についての研究は継続してまいります。

ISBN: 9784909544018
発行日: 2018.02.26
体裁: 四六判・286ページ
定価: 本体価格3,200円+税
出版社: 七月社
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

序説 文芸の様式と映画の特性──豊田四郎監督『雪国』
 
Ⅰ 〈原作現象〉の諸相
第一章 〈原作〉の記号学── 『羅生門』『浮雲』『夫婦善哉』など
第二章 《複数原作》と《遡及原作》── 溝口健二監督『雨月物語』
第三章 古典の近代化の問題── 溝口健二監督『近松物語』
第四章 〈原作〉には刺がある── 木下恵介監督『楢山節考』など
 
Ⅱ 展開される〈原作〉
第五章 意想外なものの権利── 今井正監督の文芸映画『山びこ学校』と『夜の鼓』
第六章 反転する〈リアリズム〉── 豊田四郎監督『或る女』
第七章 擬古典化と前衛性── 篠田正浩監督『心中天網島』
第八章 混血する表象── トニー・オウ監督『南京の基督』
 
展望 第二次テクスト理論の国際的射程── 映画『神の子どもたちはみな踊る』と『薬指の標本』