内容紹介
「国譲り神話」や「洩矢神と諏訪明神の神戦譚」に代表される、諏訪大社上社の縁起。本書では、それら諏訪明神の縁起譚が『先代旧事本紀』や聖徳太子伝といった外部の文献・言説と関わりながら生成・展開していく過程を、『諏方大明神画詞』『諏方大明神講式』などの諏訪信仰関連文献の検討を通じて明らかにする。また、縁起の変容を辿ることで同時に浮かび上がる〈古態〉の一端を捉えることをも試みる。
著者からのコメント
長野県諏訪地域、諏訪湖の南側に位置する諏訪上社では、明治時代の初頭まで、「大祝」の諏訪(諏方)氏や「神長官」の守矢氏などの世襲の社家が祭祀に携わっていました。本書は、そうした社家が持ち伝えた諏訪信仰の資料群に含まれる様々な神話・伝説を取り上げて、それらが時代を経るごとにどのように変化して近現代に至っているのか、そしてそれらの古い姿はどのようなものだったのかを跡付けようとしたものです。
本書の表紙に掲げたのは、幕末・明治の神長官だった守矢実顕(1825-1903)が明治29年(1896)に記した『千⿅頭神社事由』という巻物(著者所蔵)です。これは明治初期の神長官守矢氏の系図『神長守矢氏系譜』と共通する内容を持つ資料であり、諏訪神話の「生成と展開」の近代までの一つの到達点を示すものでもあります。
なお、本書では諏訪信仰の枠内にあるものを扱いましたが、こうした中近世頃における神話言説の変容の事例はまた、他の地域・神社のことを考える際にも参考となり得るものを含んでいるのではないかと考えています。
外部リンク
〔出版社〕北海道大学出版会の紹介ページ
〔試し読み〕北海道大学出版会のnote
