内容紹介
「愛」の一語が秘めた深遠な思想史の扉を開く。よりアクチュアルに、より哲学的に、なにより身近なテーマを問う。シリーズ「愛・性・家族の哲学」第1巻。
この巻には、西洋と日本の、そして古代から現代までの多様な「愛」の思想をたどることで、今の私たちの「愛」の当たり前を捉え返そうと試みているいくつかの論考が収められています。
著者からのコメント
私は第1章「古代ギリシア・ローマの哲学における愛と結婚」を担当しました。「愛」の哲学と言えばこの人、という古代ギリシアの哲学者プラトンとともに、ムソニウス・ルフスという名の知る人ぞ知る古代ローマの哲学者を中心的に取り上げています。
このシリーズは編者の藤田尚志さん(九州産業大学)と宮野真生子さん(福岡大学)が福岡で開いている「恋愛・結婚合同ゼミ」から生み出されたものですが、いくつかの偶然も重なって北海道大学とも関係の深い論集になっていることを、ここで紹介しておきたいと思います。第2巻の「第3章 私たちの身体と性とエンハンスメント――美容整形をめぐって――」を担当した佐藤岳詩さん(熊本大学)と「第6章 恋愛するとどうしてこんなに苦しいのか――性的自己決定の限界――」を担当した古賀徹さん(九州大学)は本学文学研究科のご出身、第3巻の「コラム1 結婚しないといけないの?――フランスの法律から学んだこと――」を担当した大島梨沙さん(新潟大学)は本学法学研究科のご出身です。また、編者の一人である藤田尚志さんによる第3巻「第1章 結婚の形而上学とその脱構築――契約・所有・個人概念の再検討――」は、2015年1月に本学文学研究科応用倫理研究教育センターの主催で開かれた公開シンポジウム「結婚という制度 その内と外――法学・社会学・哲学からのアプローチ」でのご講演に由来するものです。なお、この公開シンポジウムには藤田さんのほか、上記の大島梨沙さんと、さらに第3巻「コラム2 『ムーミン』シリーズに見るつながりの形」を担当している赤枝香奈子さん(筑紫女学園大学)にもご登壇いただきました。また、本シリーズ出版後の2016年5月には、以下のようなイベントを開催しました。このように研究を通して人とのつながりが広がり、それが新たな研究へと結びついていくという場に加わることができたことは、私にとって大きな成果であり喜びでした。
公開シンポジウム「性的身体と自己決定」古賀徹・佐藤岳詩 特定質問者:蔵田伸雄(北海道大学)・宮野真生子(福岡大学)司会・進行:藤田尚志
トークショー「愛の〈ぶっとんだ〉思想史〜プラトン・フーリエ・平塚らいてう」近藤智彦・藤田尚志・宮野真生子
外部リンク
〔出版社〕ナカニシヤ出版の紹介ページ