内容紹介
親の信仰と子どもの自由は、どこで交わり、どこで衝突するのか。執筆者を含む調査グループは、エホバの証人問題支援弁護団と協力して581名のウェブ調査と21名の面接調査・グループインタビューを実施し、信仰継承が子どもの人生に及ぼす影響を実証的に分析した。
著者からのコメント
私は、2022年の安倍晋三元首相殺害事件、宗教二世の当事者や支援者と一緒に、被害の実態調査と被害者支援にかかる調査研究を行い、2024年からは科学研究費[挑戦的研究(萌芽)]「宗教二世問題の解決と支援にむけた社会実装型研究」を受けてさらに発展させる形で研究を進めてきました。この共同研究の成果をまとめるのに少し時間を取ってしまいましたが、ようやく一冊をまとめることができました。
編者の櫻井は、2023年早々にエホバの証人問題支援弁護団から調査協力の依頼を受け、エホバの証人の研究で書籍を刊行していた山口瑞穂、エホバの証人の脱会者の研究をした経験がある猪瀬優理、社会調査とデータ分析が専門の清水香基に声をかけ、調査チームを編成しました。そして、弁護団と一緒になって調査の設計から調査内容の全てを検討し、①2023年にインターネット調査(スノーボーリング・サンプル、総回答数五八三件で有効回答は五八一件)、②同年に札幌・東京・京都で実施したエホバの証人二世のグループインタビュー(二一名)の調査をとりまとめたのが本書になります。
現代日本では緩やかな世俗化が進行していますが、信者の不活動化を容認しない宗教の場合に「宗教二世」問題が生起します。すなわち、共同体から解放され、自由に自分の生き方を選ぶことができ、「自分らしさ」を求めることやアイデンティティの確立がよしとされている現代において、親や親が所属する宗教団体によって自分の生き方、交友関係、進学先や就職先、性自認や性志向、結婚まで決められるような理不尽なことがあってよいのだろうかというのが2世代目以降の主張です。このクレイムが「宗教二世」による親世代や教団組織への告発であり、教団によっては「宗教虐待」による「被害」を回復するべく行政や教育・福祉の専門機関に社会的支援を求める事態になっています。
本書では、宗教二世が直面する宗教家族の困難をエホバの証人から例証します。もちろん、エホバの証人だけに宗教家族の問題があるわけではなく、伝統宗教においても同じ問題が生じる可能性があります。宗教が家族を統制するように、組織や国家までも統制することは歴史上何度も見られました。それほどに宗教は人の心と身体を揺さぶり、感動させ、同時に縛るものでもあります。その効力に強弱はあるだろうし、作動する領域もさまざまでしょう。こうした諸問題を考察する契機として宗教家族の問題、宗教二世の問題を見ていただきたいと思います。
本書は、第一章で宗教二世問題を略説し、第二章において、エホバの証人とはどのような教義を持ち宗教実践を行う教団であるのか、初学者の方にもわかるよう教義的な解説を行います。そして、エホバの証人が日本において主流派のキリスト教会を凌いでキリスト教系宗教として教団成長できた謎に社会学的にせまり、第三章で日本におけるエホバの証人の教団史をまとめます。第四章は、現在のエホバの証人の信仰実践を日常的な宗教活動と在留中国人に対する布教活動から明らかにするケーススタディです。第五章と第六章が、二世信者の生育歴から見た親と教団が関わった「宗教的虐待」とそれがもたらした複雑性トラウマを伴うメンタルヘルスの諸問題に言及する本書のハイライトです。最後に「宗教団体『エホバの証人』における宗教の信仰等に関係する児童虐待等に関する実態調査」の基礎集計をまとめています。比較研究をする際の資料になるでしょう。
外部リンク
〔出版社〕法藏館の紹介ページ
