内容紹介
人口減少社会を迎えた現代、全国コンビニ数を凌駕する仏教寺院が地域や檀家・門徒に果たす役割とは? 主要宗派の宗勢調査、実地調査に基づく多彩な事例報告から展望する。地域の寺院研究の最前線!
著者からのコメント
本書は読者として仏教学や宗教学の研究者と共に、全国に数多ある寺院の住職や寺族、宗門付設の研究所所員や仏教学科で学ぶ学部生・大学院生、宗門や教務所・宗務所で過疎対策に腐心している教団職員、そして寺院仏教の将来について思いをめぐらせている多くの方々に読んでもらえるように次のような工夫をしてみた。
一つ目は、人口減少社会という問題をわかりやすく、実証的に解説する概論を設けていること(第Ⅰ部)。二つ目に日本の主要な仏教教団である浄土宗・浄土真宗・日蓮宗・曹洞宗に関する宗勢調査や地域の実態調査を含めた詳細な概況報告・事例報告を提供しており、読者は各宗派の比較を含めてさまざまな観点から寺院仏教の状況を分析することが可能である(第Ⅱ部)。天台宗・真言宗他の宗派については二章の宗教専門誌を通じての間接的な言及に留まったことが残念であり、機会が与えられればさらに調査を重ねたいと考えている。
寺院仏教を構成する地方の寺院では、住職・寺族共に特段意識することもなく地域社会の人間関係を豊かにするさまざまな取り組みをしており、地域社会に寺院があること(Being)が地域の人々の安心感やコミュニティの持続感に大きな影響を与えていることが確認された。もちろん、弱体化する家族や地域の連帯感をボランティア活動や傾聴活動によって維持強化するにこしたことはない。しかし、寺院仏教の将来を展望する上で、何かしら特別なことをしないとダメではないかという実践型の寺院(Doing)のみが注目される現況は見直されてしかるべきではないか。このような事例研究に基づく、気づきや考察を盛り込んであることもこの本の特徴である(第Ⅲ部)。
とはいえ、今後、二〇年、三〇年後に寺院を護持してきた昭和一桁世代が亡くなった後、寺院がどのように護持されるかのついては現状維持の展望はまったくない。地方で農林漁業に従事している平均年齢六〇歳を超える人たちがリタイアした後を模索するのと同様に、誰もが納得するわかりやすい方法はないのだろうと思う。不活動宗教法人の解散・合併は宗務行政として取り組むべき課題である。廃寺は、檀家・門徒が全て退出した後に船を下りるような格好のいい形で終わることはないだろう。なるべく多くの人が納得できるような方法をみなで考えていくべき時代である。本書がそのための情報や考える素材を提供できていれば望外の喜びである。
外部リンク
〔出版社〕法蔵館のFB紹介ページ