内容紹介
本書は、北海道大学において、2015年8月25日-27日に開催された「漢語仏典の言語」に関する国際シンポジウム(北大文学研究科中国文化論講座と上海師範大学人文伝播学院との共催)の論文集であり、発表論文のうち、主として漢語仏典の音義(「音義」とは漢語文献において難読字句の発音や意味を解釈したもの。またその解釈を集めた書物)に関する論文を中心に32篇を収録したもの。すべての論文は中国語で書かれている。
著者からのコメント
漢語仏典は、儒家経典に比して文献成立当時の漢語(中国語)の口語に近いという特色を持つために、近年、漢語史研究者の注目を集めるようになっています。本書にも、漢語史分野、とりわけ音韻史と語彙史における著名な研究者による最先端の研究論文を少なからず収録することができました。
また、書名に「音義」とあるように、本書所収の論文のうち最も多いものが音義に関するものですが、この仏典音義は、漢語史分野での研究対象であると同時に、日本の国語学(特に古辞書研究)でも研究対象とされているものです。幸い、北大文学研究科には、この方面での重厚な伝統を有する言語情報学講座があり、同講座の石塚晴通先生(名誉教授)、池田証寿先生、さらには院生の方々の論文なども収録することができました。その意味で本書は、「中国語学と国語学(日本語学)との分野を超えた合作」という特色を備えるものでもあります。また、両分野の研究者間の問題意識や方法論の相違・共通性を垣間見ることができるのも「売り」の一つといえるでしょう。一般にはとっつきにくい内容と装丁(!)ですが、何かの折に手にとっていただければ幸いです。