2011.04.20

アイスランド言語、神話、歴史

―日本アイスランド学会30周年記念論文集―
著者名:
清水 誠 編(著)
文学研究院教員:
清水 誠 しみず まこと 教員ページ

内容紹介

本書は日本アイスランド学会創立30周年を記念して、会員の共同執筆により、北欧アイスランドの言語、神話、歴史に関する研究論文とサガの翻訳を収録したものです。これまでに、同学会は1991年に創立10周年を記念して、『サガ選集』(東海大学出版会) を刊行しています。今回は研究論文を主体として、内容的充実をはかりました。なお、私の担当部分は「アイスランド語の音韻とカナ表記」(p. 49-106) です。

著者からのコメント

 外国語の語彙をどのようにカナ表記するべきかという問題は、便宜的方策とはいっても、避けては通れない壁です。アイスランド語のように受容の歴史が浅く、カナ表記に合意のない外国語については、言語学的根拠に基づいた指針を示すことが強く求められます。カナ表記の前提となるカナ発音のありかたを考慮しながら、アイスランド語音韻記述の問題点を探るのが私の担当論文の目的です。
 中世文学の受容から始まった日本のアイスランド研究は、古語の推定音によるカナ表記に終始してきました。近代以降については現代語の発音に従うのが当然ですが、このことは不問に付されていた観があります。中世の文献を古語の推定音で読み、カナ表記することには、それなりの根拠があります。それでも、実際、私たち日本人は『万葉集』や『源氏物語』を古語の推定音で読んではいません。古語と現代語の相違がわずかで、中世文学の遺産を血肉としているアイスランド人にとって、このことはいっそう自明です。
 最近では、アイスランドの地名や人名も新聞やテレビ番組に登場する機会が増えてきました。しかし、アイスランド語の知識不足や音韻論的無理解から、大きな混乱が認められます。英語式にならって、アイスランド語に特有の語尾を省略した表記も見られます。本稿では、中小の外国語につきもののカナ発音とカナ表記をめぐる問題について、ひとつの分析例を提供してみました。未知の外国語の地名や人名は、やはりできるだけ正しく読みたいものですね。

ISBN: 9784905383000
発行日: 2011.04.20
体裁: A5判 214ページ
定価: 本体価格5,000円+税
出版社: 麻生出版
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

第1章 アイスランドの言語
森 信嘉「ノルウェー語に見る古ノルド語の痕跡―近世のノルウェー語および地域言語変種を中心として―」
大宮康一「現代アイスランド語の格と構文における言語変化―‟New” impersonal 構文の発生に関する考察―」
清水 誠「アイスランド語の音韻とカナ表記」
櫻井 健「アイスランド語の保守性について」
伊藤 盡「「風呂に入る」の英語表現 To Take a Bath は古北欧語からの借入か?」
 
第2章 アイスランドの神話と歴史
阪西紀子「『ストゥルルンガ・サガ』における教会堂:13世紀アイスランドの紛争の中で」
西田郁子「Níðho̜ggr の神話―Vo̜luspá 66について―」
唐澤一友「アングロ・サクソン・イングランドにおける Wōden/Óðinn」
 
第3章 アイスランド・サガ (翻訳)
大塚光子「『キャラール岬の人びとのサガ』」
林 邦彦「『イーヴェンのサガ』―Stockholm 46 紙写本版―」