内容紹介
言葉と言葉を使うときの頭の働きに着目した学問,それが認知言語学である。本書は,身近なエピソードや素朴な疑問,世界の言語についての基礎知識を盛り込み,認知言語学の立場から言葉のしくみをわかりやすく説明する。
(北大文学研究科ライブラリ 1)
著者からのコメント
<北大の講義から生まれた本>
なぜ言葉は自分の思いをそのまま伝えてくれないのか、なぜ母語の学習はふつう成功するのに外国語の学習は失敗するのか、日本語は本当に特殊なのか、日本語のようなSOV言語と英語のようなSVO言語はどちらが多いのか、そもそもなぜ言葉には語彙と文法があるのか、などの疑問をもったことはないでしょうか。
本書は、これらの疑問に触れながら、言葉のしくみを丁寧に噛み砕いて説明してみました。執筆の目的は、「世界の言語の基礎知識から言語学の最先端までをいつのまにか楽しみながら学べるような読み物」を作ることでした。これを思い立った理由のひとつは、言葉についての興味深い情報が複数の専門書に散らばっているため一般の読者に届きづらいという現状です。もうひとつは、『よくわかる・・・学』『・・・学入門』『はじめての・・・学』という類いの本をよく目にしますが、その多くは読者が一番知りたいことに答えていないのではないか、読み手の視点が欠けていないか、という私自身の懸念でした。
本書の執筆でとくに重視したのが言葉に関する学生からの率直な疑問と質問です。それに答えるためには、視野を大きく広げ、狭い意味での「言語学」という垣根を越えることを余儀なくされました。これと平行して、自分が何も知らない分野の啓蒙書を読み、ずぶの素人である自分でも興味をもって読めるものを探しました。『言葉のしくみ』を書くために「本のしくみ」も勉強することになりました。難しい目標を立てたせいか(あるいは、遅筆のせいか)何度も中断し、構想から完成まで8年もの歳月が流れましたが、最後まで粘って良かった、が今の心境です。