内容紹介
哲学の中でも特に厳密さや論理を重んじる「分析哲学」と、主に実存主義哲学の中で問われてきた「人生の意味」についての議論は相性が悪いとされてきた。しかし前世紀の終わりころから、主に英語圏で「人生の意味」に関わる諸概念について分析哲学的なアプローチを用いて論じる潮流が生じてきた。本書はそのような「人生の意味の哲学」の入門書を意図して編纂されたもので、関連する諸問題について10人の論者が論じている。
著者からのコメント
哲学研究の外部からは哲学とは「人生の意味」について考えるような学問だと見なされていることが多いにも拘わらず、哲学研究・哲学教育の内部では「人生の意味」について問うことは厳密な哲学研究のスタイルにはそぐわないと考えられてきました。
しかし「この広大な宇宙の中でちっぽけな自分の人生にどのような意味があるのか」「自分の人生の意味は自分の主観的な満足の中にあるのか、それとも真理や善といった客観的な価値の中にあるのか」「意味がある生とは幸福な生のことなのか」「人の人生が無意味なら、人は生まれてこない方がよいのか」「意味のある人生とは自己実現が達成されたような生なのか」・・・こういった問いについて分析哲学的な手法を用いて論じる「分析実存主義」とも呼ばれる潮流が英語圏に現れてきました。そのルーツの一つはウィトゲンシュタインの哲学にあるとも考えられています。そしてこのような問いは「〈〇〇〇のような偉大な人の人生には意味がある〉という文は真偽を問うことができるのか」「どうすれば自分の人生を肯定することができるのか」「〈自分の人生の意味〉の問題は自分が独りで向き合わなければならない問題なのに、それについて公共的に議論できるのはなぜなのか」といった問いに結びついていきます。
この本は哲学的分析の結果として「人生の意味」がわかった哲学者たちが、自分たちが理解した「人生の意味」を伝えるためにつくった本ではありません。しかし編者の一人として「人生の意味について哲学的に考えるとはどういうことか」を伝えることはできる本だと考えています。「人生の意味について哲学的に考えること」とはどういうことか知りたい人は、是非手に取ってほしいと思います。
外部リンク
〔出版社〕春秋社の紹介ページ