内容紹介
本書はチェコの伝説時代から、著者の死の1125年までを記した、チェコ最古の年代記で、「現存するチェコ中世の年代記はすべて本書を出発点にしている」と言われ、チェコ最古の歴史書であると共に、「チェコの地で書かれた 最も重要な中世文学作品の一つにもなっている」ので、本書はチェコの歴史と文学における、古典中の古典と言えるであろう。
著者からのコメント
いささか小生の身の丈を越える、ラテン語が原文の本書の翻訳には、80年近くの伝統があり、何度か改訂がなされたチェコ語訳の最新版(Argo 2011年)を使ったが、訳語が決めかねる時や、文意が繋がらない時などにはその都度ラテン語原文に当たっている。
本書の翻訳に関しては、歴史の専門家の方が、却ってその作業の膨大さが予測できて、おいそれとは手を出さないと思われる。歴史が素人の小生はもちろん専門家の知恵を随分お借りしたが、この年代記という形式には、年表に近い編年史とは違い、その内に歴史的事件の記述だけではなく、教訓や奇跡や軍記物や歴史的逸話など、数多くの雑多なものが含まれているので、単に歴史学の文献という枠を超えて、読み物としても面白いので、本書を昔人(むかしびと)の知恵の結晶と考えて訳を進めた。
なお本書を翻訳していると、小生が高校通学時の電車で読んだ聖書や矢内原忠雄の聖書講読、ホメロスなどのギリシャ古典、大学で習ったギリシャ語とラテン語、大学院生の時に松平家のお殿様の血を引く、松平千秋先生の研究室で読んだホラチウス、関西のロシア語学の諸先生が集まって結成された古代ロシア研究会で、20 年以上読んだロシア原初年代記などの経験が一度に思い出されて、小生の人生の総まとめのような気がした。
外部リンク
〔出版社〕成文社の紹介ページ