2022.06.30

アジア宗教のかたち

比較宗教社会学への招待
著者名:
櫻井 義秀(著)
文学院・文学研究院教員:
櫻井 義秀 さくらい よしひで 教員ページ

内容紹介

東アジア宗教をとりまく状況を自身の調査記録や見聞録を交えて、タイ上座仏教社会と東アジア宗教の文化圏を「かたち」という比較宗教社会学的視点を用いながらまとめてみたものです。具体的には、日本、韓国、中国、台湾、香港、タイの地域・国ごとに諸宗教に通底する 「かたち」をつかまえようと考えています。

著者からのコメント

日本の宗教には仏教・神道・キリスト教・新宗教に通底する「かたち」があるし、韓国の宗教には民族系宗教にもキリスト教にも韓国の「かたち」が出ています。

従来は風土論や民族文化論がこのような議論を構成していました。地域ごとの違いにこだわった議論とも言えます。しかしながら、本書では東アジアや東南アジアに共通する歴史的な経験-近代化によって、地域や文化的な特性を超えた共通の特徴が表れてきたと考えています。そのような共通性を持ちながらも、近代化のプロセスの違いによって地域ごとの違いもまた現れます。こうした着目は、歴史社会学的な見方とも言えます。

もう一つ、「かたち」という言葉にこだわりたいのは、私自身専門研究者としてタイの上座仏教や、中国・台湾・韓国・日本の仏教寺院、キリスト教会、新宗教などの研究をしてきて、個別事例がこうであったという話に満足できなくなったということがあります。30年近く特定の地域の研究をしてきて、その地域の「かたち」がおぼろげながらでも見えてこなければ、そのような研究は木を見て森を見ずの謗りを免れないのではないかと思うのです。

私は日本の祖先崇拝研究から宗教研究を始め、タイの地域研究を約20年、日本を含む東アジア全般の宗教研究も20年ほど行なってきました。意図したわけではありませんが、タイや東アジアの宗教を理解する際に、日本の宗教文化を生得的に学んでいる者として日本との比較において各地の宗教文化を理解してきたのではないかと思われます。そうすることで、特定宗教だけ研究している方や特定地域の宗教だけ見て来られた方よりも、浅いと言われるかもしれませんが、広い視点で宗教文化の「かたち」を少しずつ具体的な像として思い浮かべられるようになったのではないかと思います。

自分自身の見方が広がってきたもう一つの要因として、フィールドワークの研究手法も大きかったように思われます。私は宗教調査の過程で多くの宗教者と出会ってきました。それぞれの国の個別宗教であってもとことん打ち込んでいる人との会話のなかで、その地域、その時代の「宗教のかたち」を浮かび上がらせるような言葉にうたれるときがありました。そうした言葉は、いわゆる教理や教説ではなく、寺院や教会という場、宗教者のたたずまいや活動のなかにイメージを結ぶ日常語でした。そうした言葉を軸に、私自身がつかまえたイメージを語り直す作業が、私の「宗教文化=宗教のかたち論」かもしれません。

ISBN: 9784831877574
発行日: 2022.06.30
体裁: 四六判・340ページ
定価: 本体価格2,500円+税
出版社: 法蔵館
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

はじめに
第一章 宗教の進化と社会科学
第二章 タイ仏教のかたち
第三章 タイ政治と仏教
第四章 東アジア宗教のかたち
第五章 中国・台湾の宗教変容
第六章 韓国と日本の宗教変容
第七章 ナショナリズムと生きる希望
付 録 アジアの宗教を読む20冊