2022.2.22

接続する文芸学

村上春樹・小川洋子・宮崎駿
著者名:
中村 三春(著)
文学院・文学研究院教員:
中村 三春(名誉教授) なかむら みはる

内容紹介

 物語を語り、読むことは、私を私ならざるものに「接続」することである。
語り論、比較文学、イメージ論、アダプテーション論を駆使して、村上春樹『騎士団長殺し』『多崎つくる』『ノルウェイの森』、小川洋子『ホテル・アイリス』『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』、宮崎駿『風の谷のナウシカ』『風立ちぬ』などを論じる。

著者からのコメント

物語が何かと何かを接続することは、必然のことと思われます。けれども、物事は接続すればきちんと繋がるとは限りません。さまざまな繋がり方、繋げ方があり、またいわば〈繋がらなさ〉すら、文芸・芸術の場合にはその魅力の源となりえます。

私はここ数年、小説とその外部との接続のあり方を比較文学により、また内部における物語のトランジット(乗り継ぎ)については語りの理論に基づき、さらに小説とそれを原作とした映画との関係をアダプテーションの理論に依拠して、論文や授業・講演などを通して考えてきました。それらをまとめたものが本書です。

この試みはまだ先の展開も考えており、次は詩の問題へも論述を伸ばしていきたいのです。考えてみれば、私たち自身、誰かや何かと繋がったり、あるいは切れたりしながら日々を生きています。人間とは接続する動物なのです。本書がそのことを考えるよすがとなれば幸いです。

プラス1ピースの読書会〈動画版〉

ISBN: 9784909544223
発行日: 2022.2.22
体裁: 四六判・352ページ
定価: 本体価格3,500円+税
出版社: 七月社
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

I 村上春樹
第1章 「壁」は越えられるか
第2章 運命・必然・偶然
第3章 見果てぬ『ノルウェイの森』
II 小川洋子
第4章 小川洋子と『アンネの日記』
第5章 小川洋子と〈大人にならない少年〉たち
第6章 小川洋子『琥珀のまたたき』と監禁の終わるとき
III 宮崎駿/宮澤賢治
第7章 液状化する身体
第8章 宮崎駿のアニメーション映画における戦争
第9章 変移する〈永遠の転校生〉物語