内容紹介
文化人類学の魅力は、他者の世界をフィールドワークによって深く知ることにある。他者を鏡として自己を振り返り、日常の当たり前を根本から問い直す文化人類学の反照性は、人々を惹きつけ、文明批判や社会評論としても大きな力をもってきた。本書はこうした文化人類学の原点に戻って、外国人や在野研究者を含む16人の多彩な人類学者たちが、各々のフィールドで身体知として掴んだ他者の姿と世界を伝える(本書カバーの紹介文より)。
著者からのコメント
近年、文化人類学は理論とテーマの両面で大きく発展しましたが、同時にそれは過度の専門化をもたらしました。その結果、大学生や一般読者との間に乖離が生まれつつあるように思われます。本書は文化人類学の原点に立ち戻って、異文化と接するとはどういうことなのかについて、16人の執筆者が各々の体験に基づいて語ったエッセイ集です。
本書には二つの大きな特徴があります。第一の特徴は、日本という日本人にとっての自文化から見た異文化だけではなく、海外から見た異文化としての日本について書かれていることです。この「外から見た日本」を担当した5人の執筆者は、すべて北海道大学で学んだ元留学生たちです。もちろん、一口に日本といっても多様ですので、あまり知られていない国内の異文化について書かれた章も複数あります。
第二の特徴は、執筆者の約3分の1がプロフェッショナルな研究者ではなく、大学院の修士課程を修了した後に就職して、実社会で活躍している人たちだということです。現役大学生のほとんどは、卒業後に一般企業や官公庁で働き始めるわけですから、文化人類学に限らず、大学での学びを実社会でどのように活かすかという問題に関心があるでしょう。本書の執筆者は、全員が北海道大学の卒業生またはゆかりのある人たちなので、北大生にとって特に興味深いと思います。
取り上げた国・地域は以下の通りです。ベトナム・ウガンダ(第1章)、ネパール(第2章)、中国(第3章)、インド(第4章)、ロシア連邦タタルスタン共和国(第5章)、北米‐先住民族ヤキ(第6章)、ドイツ(第7章)、北米(第8章)、ラトビア・日本(第9章)、中国・日本(第10章)、シンガポール・北米・日本(第11章)、台湾・日本‐原住民/先住民(第12章)、スペインカタルーニャ州(第13章)、日本‐朝鮮学校(第14章)、日本‐社交ダンス(第15章)、日本‐視聴覚障害者(第16章)。[本書では社会モデルに沿ってpeople with disabilitiesを障「害」者と表記しています]。
外部リンク
〔出版社〕ミネルヴァ書房の紹介ページ