内容紹介
本書は、『月刊住職』に2016年から2020年はじめまで連載した死生観やグリーフ、葬送・墓制の変化、そしてグリーフケアやスピリチュアルケアをとりまく状況を、長寿化と家族の個人化、地域社会と経済社会の変化を軸に種々の側面から描いてみたものです。
著者からのコメント
期せずして、ALS患者に対する嘱託殺人の事件が発覚し、本書でも述べた安楽死・尊厳死をめぐる問題、臓器移植や延命治療という医療の発達に対して人々の「いのち」に対する認識と思いがついていけない状況などが露呈しました。新型コロナウイルスの感染についての言説や政策においても、健康と病気、健常と障がい、生と死という境界が自然なものではなく、メディアと政治によって社会的に構築されていることが日々実感されます。事故とは言え、感染者のプライバシーが自治体の公式HPで暴露され、マスメディアが感染者の職場や学校、地域まで特定する情報を公然と流している状況に唖然とされている方々も多いと思われます。終息が見えない日常生活において、「自粛」を余儀なくされる人々のストレスを感染者に向け、病いに倒れた人々や家族・関係者にお詫びを強要する重たい「空気感」や、「油断」しないで「新しい生活様式」を確立しようというスローガンへの共鳴をたのみに権力基盤を固める政治家に悪い予感がします。
ここはひとつ落ち着いて冷静に考えるべき時ではないでしょうか。哲学や歴史、宗教思想ほど頭を冷やすにうってつけの良薬はありません。なぜといって、人間や社会は規模や様相を異にするだけで、何度でも同じことを繰り返し、その都度反省するがすぐに忘れるという歴史を積み重ねてきたからです。
「葬儀レス社会」と出版社の要望で刺激的なタイトルになりましたが、センセーショナルな話題を提供しようというものではありません。中身を読んでいただければ、葬儀・法要・墓といったグリーフと仏教の深い関係がこれまであったが、その再構築が求められること、四苦八苦に悩み、困っている人の助けを頭に常に置いている人たち-宗教者がいるとあたりまえのことを指摘しているだけです。
学生の皆さんには、祖父母の生き方や考え方がどうであったか、今、何を心配されているのか、二世代上の人たちを理解する手がかりを提供する本となるでしょう。
外部リンク
〔出版社〕興山舎の紹介ページ