内容紹介
「芸術」としての映画が興隆した1910年代。映画史のベル・エポック期に演劇、オペラ、美術、文学など他の芸術ジャンルとせめぎあいながら、映画は自らの固有性をどのように模索していったのか。「映画」という新たな形式へ。世紀転換期からモダニズムにおける映画と芸術の交流に迫る。
著者からのコメント
本書で扱うのは今から一世紀近く前のサイレント時代の映画です。無声映画研究の最大の魅力は、ひとつの作品が突然に映画史の文脈を飛び越える点にあります。伝説的な舞台女優の十八番の場面を映画で見ることができたり、見覚えのあるルネサンス絵画の構図が動く絵として再現されていたり、古典文芸の物語を時代考証の練られた紙芝居のように追うことができたり。大道芸人のショーの映画は映画館という空間をまるで寄席にいるかのように変えたりもします。しかも種々雑多なこれらの映画が同じ一つのプログラムに盛り込まれていたのです。本書では、演劇や美術、文学、大衆芸能など映画をとりまくあらゆる隣接領域との関係を切り離さずに、映画史の考察を試みました。いまだジャンルとしてマージナルな存在であったスクリーンの世界に没入していただけると嬉しいです。
外部リンク
〔出版社〕人文書院の紹介ページ