2016.02.10

映画の胎動

一九一〇年代の比較映画史
著者名:
小川佐和子(著)
文学院・文学研究院教員:
小川 佐和子 おがわ さわこ 教員ページ

内容紹介

「芸術」としての映画が興隆した1910年代。映画史のベル・エポック期に演劇、オペラ、美術、文学など他の芸術ジャンルとせめぎあいながら、映画は自らの固有性をどのように模索していったのか。「映画」という新たな形式へ。世紀転換期からモダニズムにおける映画と芸術の交流に迫る。

著者からのコメント

本書で扱うのは今から一世紀近く前のサイレント時代の映画です。無声映画研究の最大の魅力は、ひとつの作品が突然に映画史の文脈を飛び越える点にあります。伝説的な舞台女優の十八番の場面を映画で見ることができたり、見覚えのあるルネサンス絵画の構図が動く絵として再現されていたり、古典文芸の物語を時代考証の練られた紙芝居のように追うことができたり。大道芸人のショーの映画は映画館という空間をまるで寄席にいるかのように変えたりもします。しかも種々雑多なこれらの映画が同じ一つのプログラムに盛り込まれていたのです。本書では、演劇や美術、文学、大衆芸能など映画をとりまくあらゆる隣接領域との関係を切り離さずに、映画史の考察を試みました。いまだジャンルとしてマージナルな存在であったスクリーンの世界に没入していただけると嬉しいです。

ISBN: 9784409100356
発行日: 2016.02.10
体裁: A5判・364ページ
定価: 本体価格6,800円+税
出版社: 人文書院
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

序章 二〇世紀初頭における「映画」と「芸術」の交流
第1章 映画と演劇―沈黙の、雄弁なメロドラマ
第2章 映画と美術―スクリーンにおける空間の画家
第3章 映画と文学―ナショナル・シネマの生成
第4章 大衆芸能と映画―語り芸・新派劇から活動写真へ
第5章 日本映画の近代化―外国映画との対峙
終章 「芸術」としての映画の終焉