2026.10.25

諏訪信仰の神話世界

諏訪上社縁起の生成と展開
著者名:
間枝 遼太郎(元専門研究員)
文学院・文学研究院教員:
間枝 遼太郎(元専門研究員) まえだ りょうたろう

内容紹介

「国譲り神話」や「洩矢神と諏訪明神の神戦譚」に代表される、諏訪大社上社の縁起。本書では、それら諏訪明神の縁起譚が『先代旧事本紀』や聖徳太子伝といった外部の文献・言説と関わりながら生成・展開していく過程を、『諏方大明神画詞』『諏方大明神講式』などの諏訪信仰関連文献の検討を通じて明らかにする。また、縁起の変容を辿ることで同時に浮かび上がる〈古態〉の一端を捉えることをも試みる。

著者からのコメント

長野県諏訪地域、諏訪湖の南側に位置する諏訪上社では、明治時代の初頭まで、「大祝」の諏訪(諏方)氏や「神長官」の守矢氏などの世襲の社家が祭祀に携わっていました。本書は、そうした社家が持ち伝えた諏訪信仰の資料群に含まれる様々な神話・伝説を取り上げて、それらが時代を経るごとにどのように変化して近現代に至っているのか、そしてそれらの古い姿はどのようなものだったのかを跡付けようとしたものです。
本書の表紙に掲げたのは、幕末・明治の神長官だった守矢実顕(1825-1903)が明治29年(1896)に記した『千⿅頭神社事由』という巻物(著者所蔵)です。これは明治初期の神長官守矢氏の系図『神長守矢氏系譜』と共通する内容を持つ資料であり、諏訪神話の「生成と展開」の近代までの一つの到達点を示すものでもあります。
なお、本書では諏訪信仰の枠内にあるものを扱いましたが、こうした中近世頃における神話言説の変容の事例はまた、他の地域・神社のことを考える際にも参考となり得るものを含んでいるのではないかと考えています。

ISBN: 9784832969131
発行日: 2026.10.25
体裁: A5判・232頁
定価: 本体価格: 9,000円+税
出版社: 北海道大学出版会
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

序論
第一部 『諏方大明神画詞』の研究
第一章 『諏方大明神画詞』の国譲り神話:『先代旧事本紀』からの引用の問題を中心に
第二章 神功皇后三韓出兵譚と『諏方大明神画詞』:天皇を権威付ける縁起
第三章 『諏方大明神画詞』諸本考

 

第二部 諏訪明神垂迹譚と聖徳太子伝:〈モリヤ〉の物語をめぐって
第一章 諏訪明神縁起における聖徳太子伝の受容と展開:『諏方大明神講式』と洩矢神・物部守屋同体説
第二章 諏訪信仰における聖徳太子伝の影響:物部守屋に注目して
第三章 『諏訪神道縁起』の基礎的考察:中世諏訪の在地縁起
第四章 『嘉禎三年上書』考:守矢家文書の新出佚文に見る中世諏訪信仰とモリヤ伝承

 

第三部 近世の諏訪明神縁起と氏祖伝承
第一章 国譲り神話と近世諏訪明神縁起:「健御名刀命」の神話をめぐって
第二章 『諏方大明神画詞』の受容史:国譲り神話の扱いを中心に
第三章 大祝本『神氏系図』・『阿蘇家略系譜』再考:再構成される諏訪の伝承
結論