2024.8.20

利他主義の可能性

著者名:
トマス・ネーゲル著 蔵田伸雄 監訳
文学院・文学研究院教員:
蔵田 伸雄(名誉教授) くらた のぶお

内容紹介

アメリカを代表する現代哲学者の一人であるトマス・ネーゲルの最初の著作です(原著の出版は1971年)。本書でネーゲルは「利他主義」altruismを共感などの感情ではなく、「理由」にもとづけることを試みています。ネーゲルはそこで自分の将来の利益について考えることである「慎慮」prudenceについての分析を応用しています。またネーゲルは「非個人的観点」と「個人的観点」を区別して、利他主義にとって重要なのは前者の観点だとしています。

著者からのコメント

本書は現代の規範倫理学・メタ倫理学の中でも重要な著作の一つとされており、本書で示された概念や用語は現代の倫理学の中で広く用いられています。特に「理由」に着目する本書のアプローチは直接的・間接的に多くの哲学者に影響を与えています。しかし、強い客観主義をとる本書の主張は難解と言われてきました。内容の難解さもあって、翻訳作業には長い時間がかかってしまいました。できるだけ正確かつわかりやすい訳にすることを心がけたので、学生さんを含めて現代の倫理学に関心のある方に是非手に取っていただきたいと思います。

ISBN: 9784326199747
発行日: 2024.8.20
体裁: 四六判・288ページ
定価: 本体定価3,200円+税
出版社: 勁草書房
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

第一部 倫理と人間の動機づけ
第I章  道徳の基礎
第II章  伝統的論争
第III章  解決
第IV章  必然性と解釈

 

第二部  主観的理由と慎慮
第V章  欲求
第VI章  慎慮による動機づけと現在
第VII章  理由
第VIII章  慎慮の理由の解釈──通時的な同一性

 

第三部  客観的理由と利他主義
第IX章  利他主義──直観的問題
第X章  客観的理由
第XI章  独我論、乖離、そして非個人的観点
第XII章 客観的理由の解釈
第XIII章 帰結
第XIV章 結論