内容紹介
創価学会はいかなる理念と組織戦略をもって戦後から現代まで生き抜いてきたのか。何のために政治参加を指向するのか?日本最大の教団である創価学会が日本社会に与える衝撃を政治との関係から読み解く。
著者からのコメント
私たちは、政治宗教という耳慣れない言葉を創価学会という教団の特徴を示す分析概念として使っています。戦前の創価教育学会や戦後の創価学会は設立当初から政治参加を企図していたわけではありませんが、公明政治連盟が結成されてから現在に到る60年の歴史において、創価学会は政治に直接参加するための組織体制や運動形態に転換してきました。教説や信仰のあり方においても信者を政治参加に強力に動員する宗教の類型として、特定の政治家や政党を間接的に支援・後援する他教団とは性格を異にしています。
本書では、創価学会の設立と教団成長・発展の経緯を歴史的にたどりながら、指導者や初期信者たちに抱かれた「勝利への渇望」という集合的記憶、選挙活動に活かされる信仰のあり方とジェンダー化される信仰と組織編成、創価学会信者が抱く平和と福祉の理念が政権与党となった公明党の現実路線によって揺らぐ状況、成長・成功神話に固執するがゆえの隘路を日本社会の将来展望と合わせながらみていきます。
ところで、創価学会と政治とのかかわりを考察した本書の企画は数年前にさかのぼります。2011年に刊行した李元範・櫻井義秀編『越境する日韓宗教文化-韓国の日系宗教 日本の韓流キリスト教』(北海道大学出版会)の継続的な研究として、韓国で約140万人の信者人口を有し、韓国政界においても注目されている創価学会と日本の創価学会を比較しながら、政治宗教の日韓比較を行おうと考えたのです。
しかし、両国ともに三年に及ぶコロナ禍と韓国における補足調査の困難などがあり、韓国側は原稿の集約を断念しました。出版の断念も考えたのですが、まずは日本側で研究成果を先に公開し、韓国側を待とうということにしました。その際、日本側の原稿だけでは一書にならないので、六章構成のうち櫻井が二章分、猪瀬がさらに一章を追加して粟津の章と併せることにしました。
私たちの研究は宗教学や宗教社会学の学術書として執筆したものですが、同時に、宗教関係者や市民の方はもとより、創価学会の幹部、信者のみなさんにも読んでもらえるように宗教に関わる洞察を含めたつもりです。こうした試みがどれほど成功しているかは、読者の判断に任せるしかないのですが、ご高覧いただきご叱正を賜れることを願う次第です。
外部リンク
〔出版社〕法藏館の紹介ページ