和田 博美

プロフィール

和田 博美 特任教授 / WADA Hiromi
研究内容

妊娠中の実験動物(ラット)に環境汚染物質を投与して、生まれてくるラットの認知行動や社会行動の発達を解析しています。環境汚染物質による発達障害を予測・評価して、予防に役立てる研究を行っています。

研究分野
発達神経行動毒性学
キーワード
環境汚染物質、ラット、認知行動、社会行動、発達障害
文学研究院 所属部門/分野/研究室
人間科学部門/心理学分野/心理学研究室
文学院 担当専攻/講座/研究室
人間科学専攻/心理学講座/心理学研究室
文学部 担当コース/研究室
人文科学科/人間科学コース/心理学研究室
連絡先

研究室: 307
TEL: 011-706-3321
FAX: 011-706-3321
Email: wada*let.hokudai.ac.jp
(*を半角@に変えて入力ください)

研究生を希望される外国人留学生(日本在住者をふくむ)は、「研究生出願要項【外国人留学生】」に従って、定められた期間に応募してください。教員に直接メールを送信しても返信はありません。
関連リンク

Lab.letters

Lab.letters 研究室からのメッセージ
心理学研究室和田 博美 特任教授

病気は「治療」より「予防」
社会貢献を意識した研究

私たちの研究室ではラットに環境汚染物質を投与して、認知行動(学習、記憶、注意、不安、うつ)や社会行動(コミュニケーション、他個体認知)の発達を解析しています。発達障害を早期に発見することで予防に役立て、社会に貢献したいと考えています。例えば、赤ちゃんラットは40~50kHzの超音波を出してお母さんラットを呼びます。ところが難燃剤(プラスチックなどを燃えにくくして、火災から人命を守るために使用される)を投与されると超音波発声に変異が起こり、お母さんが気づきにくくなる可能性があります。自然界では赤ちゃんラットの生存が脅かされることになるでしょう。コミュニケーション機能が損なわれることで群れが崩壊する可能性もあります。ラットは人間が捨てた残飯も食べています。ラットに起こる変異は人間に忍び寄る脅威の前兆かもしれません。

赤ちゃんラットの超音波発声。発声中に周波数が変化する周波数変調型の発声で、母親を呼ぶために重要な働きがあると考えられています。
趣味は登山。北穂高岳を目指して命の洗濯。「登山も研究も人生もこつこつと地道な一歩の積み重ねです」
和田教授の研究室には高機能な研究機器があります。これはネズミの赤ちゃんが発する超音波を特殊なマイクロフォンで測定しているところ。赤ちゃんネズミは一人になると40~50kHzの超音波を発してお母さんネズミを呼びます。測定した超音波は、専用の解析ソフトを用いて発声の周波数、周波数変調、周波数帯域、長さ、振幅などの音響学的特徴を分析します。

思考の独り立ちを促す指導
忍耐の果てに開花する喜びが

実証研究の基本は、疑問に思ったことを自分の目や耳、体で確かめることです。指導学生には、「どうしたらいいですか」と安易に他人をあてにする前に、まずデータを読み、論文を読んで、論理的に考えて自分なりの結論を導き出すことの重要性を説いています。

また動物を扱う実験に関わる者として、動物実験の倫理や福祉を理解するとともに、ラットのエサやりやフン掃除といった日常の飼育管理も実験の一部であることを忘れてはなりません。半年や一年間かけた地道な世話がやがては目指す「予防」につながっていくのです。忍耐の果てに花を咲かせる経験は、皆さんが社会人となったのちにも大切な人生訓となってくれるのではないでしょうか。

メッセージ
こんな研究をやってみませんか?!
  • 妊娠中のラットに環境汚染物質投与して、生まれてくる子ラット(雪のように白く、マシュマロのように可愛いラットがたくさん生まれます!)を育てます。
  • このネズミに認知行動の発達障害(多動性、衝動性、固執性、不安、うつ、注意、記憶)や社会行動の発達障害(超音波コミュニケーション、他個体の認知・記憶)が起こるかを解析します。
  • 認知行動の解析には、オペラント条件付けを利用したレバー押し学習や水迷路学習、強制水泳試験や高架式十字迷路試験を行います。
  • 社会行動の解析には、超音波発声の解析や他個体の認知・記憶試験を行います。
  • その他にも、超音波コミュニケーションを利用したラットの言語発達や、異なる超音波発声がどのような意味を持っているのかといった研究ができます。 
研究室の特色と教育
  • まずはラットと友達になりましょう。先輩学生が、かわいがり方を教えます。
  • 超音波の解析やオペラント条件づけの手法を学び、先輩学生を手伝いながら実地訓練を行います。
  • 大学院生は自分の研究を考え、テーマに沿った実験計画を立てるように指導します。
  • 医学、薬学、教育学研究院の教員と連携して、文理融合型の教育を行っています(脳科学研究教育センター)。文学部では体験できない授業(人体解剖、生理・薬理学実験、先端医療機器の操作等)を受けることもできます。

研究活動

略歴

栃木県立足利高等学校卒、北海道大学文学部卒、同大学院環境科学研究科(社会環境学専攻)修了、学術博士。北海道大学医療技術短期大学部助教授、北海道大学大学院文学研究科助教授を経て現職。

主要業績

  • 『行動心理学―社会貢献への道―』岩本隆茂・和田博美共編著(勁草書房)
  • 『行動分析と健康被害の予測・評価』岩本隆茂・和田博美編著、行動心理学―社会貢献への道 ―(勁草書房)
  • 『環境ホルモンと発達障害』内山伊知郎・青山謙二郎・田中あゆみ編著、子どものこころを育 む発達科学(北大路書房)
  • 『動物は世界をどのように認識しているのか?-動物の認知行動-』仲 眞紀子編著、認知心 理学-心のメカニズムを解き明かす(ミネルヴァ書房)

所属学会

  • 日本心理学会
  • 日本動物心理学会
  • 日本行動科学学会
  • 日本内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)学会

教育活動

授業担当(文学部)

  • 基礎心理学
  • 心理学実験実習
  • 心理学特殊演習

授業担当(文学院)

  • 研究倫理・論文指導特殊講義
  • 心理学特殊講義
  • 行動理論特別演習

授業担当(全学教育)

  • 科学・技術の世界

おすすめの本

  • 『実験心理学の新しいかたち』廣中直行(編著)誠信書房
    第10章「実験異常心理学の挑戦-行動毒性学・行動奇形学」は、拙著です。読んでみて下さい。