白木沢 旭児

プロフィール

白木沢 旭児 教授 / SHIRAKIZAWA Asahiko
研究内容

これまでは、1930年代における貿易政策・統制経済と輸出産業について研究してきましたが、4、5年前から戦時期の貿易と大陸経済建設の経済史をテーマにしています。

研究分野
日本近現代史、日本経済史
キーワード
貿易、統制経済、長期建設、日中戦争
文学研究院 所属部門/分野/研究室
人文学部門/歴史学分野/日本史学研究室
文学院 担当専攻/講座/研究室
人文学専攻/歴史学講座/日本史学研究室
文学部 担当コース/研究室
人文科学科/歴史学・人類学コース/日本史学研究室
連絡先

研究室: 516
TEL: 011-706-3040
Email: siraki*let.hokudai.ac.jp 
(*を半角@に変えて入力ください)

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Lab.letters

Lab.letters 研究室からのメッセージ
日本史学研究室白木沢 旭児 教授

日本復興をかけた統制経済
長期建設から見る日中戦争

サムネイル写真: 日中戦争のとき、中国占領地行政を担当する興亜院が設立された。興亜院の技師が所持していた史料。

昭和初期の「統制経済」とは本来、昭和恐慌からの脱却を懸けた明るい希望が託された言葉でした。生産調整や価格協定で人為的に市場をコントロールすることが「統制」の意味でした。人絹(じんけん)織物や陶磁器などの輸出産業が伸び始めると、今度は諸外国との貿易摩擦を避けるための統制経済へ。そして歴史は1937年の盧溝橋事件から始まる日中戦争に突入します。石炭や鉄鉱石の資源を求めた日本にとって日中戦争は大陸に重工業の基盤を築く「長期建設」戦でもありました。今も各地に残る日本語史料を参照しながら戦時期の大陸経済史に取り組んでいます。

日中戦争中には、華北に製鉄業を興す計画がたてられた。
1939年の華北に広がる鉄鉱石鉱山や炭鉱を記した地図。精確な手描きに技師のレベルの高さがうかがえる。

まだ誰も知らない史料を発掘
全国に先駆けた引揚研究も

院生に最も期待することは史料探しへの熱意です。まだ誰も知らない、あるいは日の目を見なかった史料を発掘し新たな史実を紹介する。歴史研究の中でも近現代史、とりわけ植民地や大陸関連のテーマにはそうした可能性がおおいに秘められています。数年前に「朝鮮からの引揚」を研究テーマに選んだ院生がいましたが、当時は今ほど注目されていない分野だったため指導する我々にも新鮮な発見が幾つもありました。北海道には樺太からの引揚者もおられるため、樺太史研究に最適な地。北海道大学は大陸の研究機関とのパイプも厚く、文献収集に有利な環境が整っています。

(聞き手・構成 佐藤優子)

メッセージ

戦争中の大陸経済建設に関心を抱いたのは、北大附属図書館に所蔵されている膨大な関係文献を見るようになってからです。戦前・戦時を生きた日本人にとって大陸は身近な存在でした。ビジネスはもちろん旅行に行く機会も多く、知人・親族に大陸関係者が必ずいたはずです。北大など戦前から存在していた大学には、この時代に刊行された図書、雑誌が残されており、当時の人々の足跡を見ることができます。

近年では、韓国、中国、台湾、ロシア(サハリン)など近隣諸国との学術的な交流が盛んになり、相互に資料調査に出かけることが可能になりました。これらの地域にも驚くほど日本語文献が残されていることに気づかされます。北大・日本史研究室では、古代から近現代まで本格的に勉強ができますが、近現代では卒論・修論のテーマとして朝鮮・満州・中国・樺太などを選ぶ学生が増えています。

また、北海道という地域が「外地性」をもつことから、北海道近代史研究の蓄積を植民地史研究に生かすことも可能ではないかと思います。みなさんも、歴史研究のフロンティアにぜひとも挑戦してみて下さい。

研究活動

略歴

1982年 京都大学文学部卒業、1988年 京都大学大学院農学研究科博士課程退学、同年 佐賀大学経済学部講師、1990年 北海道大学文学部助教授、2002年 同上教授(現在に至る)

主要業績

所属学会

  • 社会経済史学会
  • 政治経済学・経済史学会
  • 日本史研究会
  • 日本農業史学会

教育活動

授業担当(文学部)

  • 日本史学概論
  • 日本史学演習

授業担当(文学院)

  • 複合環境文化論
  • 日本史学特殊講義
  • 日本近現代史特別演習

授業担当(全学教育)

  • 歴史の視座
  • 一般教育演習

おすすめの本

  • 『日中戦争から世界戦争へ』永井和著、思文閣出版、2007年、7,600円。
    租界問題や反英運動などを丹念に追求した研究書で、日中戦争のイメージが変わりました。