学びも人も多様な文学部。充実の経験が人事総務業務の力に

プロフィール

成田 友里恵 さん(ミハル通信株式会社 勤務)
北海道札幌市出身。札幌東高等学校卒業後、北大文学部に入学。文学部では東洋史学講座*を経て、言語文学コースの映像・表現文化論講座*に移り、映画作品について学ぶ。2016年3月に卒業。2016年4月よりミハル通信株式会社に入社。現在、人事総務部門にて勤務。

*2019年4月の改組により、東洋史学講座は、東洋史学研究室となり、映像・表現文化論講座は映像・現代文化論研究室となりました。

 

北大文学部を選んだ理由

高校生の頃、進路に特段の希望がないのであれば大学は出ておいた方がいいと両親に勧められ、まずは大学進学を決めました。北大は出身高校からの進学者が多いほか、父が農学部を卒業していることもあり、札幌で生まれ育つ中で最も身近な大学だったため、自然と北大が志望校となりました

文系科目の方が得意だったため高校2年次には文系クラスに進みましたが、当初志望学部は決まっていませんでした。授業を受ける中で、世界史や倫理の授業にとても興味が湧き面白いと感じるようになりました。そのため、関心のある分野が学べる北大文学部を志望学部として選びました。

文学部入学後も、専攻分野はすぐには決まりませんでした。漠然と思い浮かんだのはイタリアのシチリア島です。高校の授業で関心を持ったのに加え、好きな映画の中で映し出される光景に強く心を惹かれたため研究してみたいと思うようになりました。

近い地域を研究対象にされている先生がいらっしゃったため、2年次には東洋史学講座に進みました。文献が読めるようにアラビア語の学習をしたりしていましたが、自分が学びたいのは史学なのだろうかと悩むようになりました。

専攻分野を決めた動機に立ち返ると、本当に心を惹かれていたのは映画における表象ではなかったかという気づきがありました。そして3年次に映像・表現文化論講座に移籍しました。講座の移籍には勇気が要りましたが、その後の学びは実りあるものとなり、今では決断をして良かったと思っています。選択を受け入れてくださった両講座の先生方、認めて背中を押してくれた両親にはとても感謝しています。

文学部ではどんな研究を

卒業論文はルイス・ブニュエルの映画作品をテーマとしました。

例えば眼球を剃刀で切り裂くシーンが有名な『アンダルシアの犬』では「見ること」についてなど、ブニュエルの作品群は常に私たち観客に問いかけをし、刺激を与えるものであり、その問いかけに答えを返していくことは大変に挑みがいがありました。

ブニュエルはスペイン出身の映画監督ですがフランスで製作された作品も多くあったため、作品や文献に触れる上で、第二外国語でフランス語を選択していたことが役立ちました。論文は演習で学んだフランス現代思想を糸口とし、視覚や認識といった論点が中心の作家論となりました。

北大文学部に行ってよかったですか

とても良かったです。

北大文学部では幅広い分野で研究が行われていますが、授業を通してそれらの一端に触れることができます。私は言語の仕組みや起源に興味があったため、古典ギリシア語やラテン語の演習を受講していました。授業の予習には大変苦労しましたが、まだ見ぬ分野に足を踏み入れ学ぶことはとてもわくわくする経験でした。

また、文学部での学びが礎となり、映画や小説といった娯楽もより楽しめるようになりました。他にも、はじめは何が言われているのかまったく分からなかった現代詩も、読み方を学ぶことで作品に親しめるようになりました。物事への関心や見識が広がったことで、人生がより豊かになったと思います。

在学中、大変だったことは

卒業論文の執筆自体も大変でしたが、テーマを決めるのにも苦労しました。

映画について書きたいということは決まっていましたが、関心があるということに加え、自分の力量で論を展開することができる現実的なものと考えると、テーマの選定に難航しました。そんな中、映画に関する授業でブニュエルの一作品についてレポートを書いていたことを思い出し、他の作品も鑑賞してみたり文献を読んでみたりするうちに、テーマの構想が徐々にできていきました。日々のレポートは興味の種を芽吹かせ、卒業論文はその一つを大きく育てるようなものなのだと今になって思います。

卒業後→現在までの道のり

生まれてから大学在学時までのほとんどを北海道内で過ごしていたため、北海道外に出てみたいという気持ちがありました。また、せっかく環境が一変するなら、これまであまり関わりのなかった理系の分野にも挑戦してみたいという思いがあったため、メーカーの事務職等を中心に就職活動を行っていました。

現在勤めている会社は神奈川県鎌倉市に本社がありますが、北大内の合同企業説明会で企業情報を知り、就職するに至りました。まったく違う分野で始めた就職活動でしたが、説明会でブースを訪れたきっかけは、パンフレットの会社紹介に「映像」という自分にとって親しみのあるキーワードを見かけたことでした。一見遠いようで実は近い部分もある、面白い就職をしたなと思っています。

現在のお仕事の内容

職場のロビーにて。背後に展示されているのは昭和時代の製品です。製品知識はまだまだ勉強中です。

放送・通信機器メーカーの人事総務部門で働いています。人事や採用・教育、労務や安全衛生等、幅広い業務を担当すると説明会で聞き、自分の性格に合っていると思い、採用面接時に配属を希望しました。

入社後は労働基準法や労働安全衛生法といった法文を読むことがあったり、取引の契約書を作成することがあったりと、大学時代とはまた違った分野に飛び込んでいます。はじめは分からないことだらけでしたが、先輩や周りの方々の力も借りて、一つずつ経験を積み重ね自分のものにしています。

また、採用業務では全国各地の大学に出張しますが、ときには母校を訪れることもあります。学生の方には、北大出身や文学部出身であることを生かし、自分の就職活動時の経験を思い出しながらお話しています。

職場の自席のようす

大学で学んだことは今のお仕事に役に立っていますか

確実に役立っていると思います。

まず思いつくのは、物事を論理立てて考え、他者にも伝わるように文章や言葉にすることです。レポートや発表で培われた力は、人事総務の仕事であれば、例えば社内規程を作成しそれを説明し理解を得るといったことに生かすことができます。

また、社会に出てからは、様々な年代や異なる価値観を持った他者と関わる機会が格段に増えました。北大文学部では出身や専攻分野の違う学生がそれぞれに勉学に励んでおり、演習の授業では互いの見地から議論を交わすため、多様性を受け入れ相手を尊重しながら自分の意見を主張する姿勢が自然と身についたと思います。

今後の目標・夢

“得意なことを生かす”ことです。

文学部、そして全学の授業やサークル活動を通して様々な仲間たちとの出会いがありましたが、大学時代から現在に至るまでの交流は本当に楽しくかけがえのないものとなりました。皆それぞれに違った長所や得意分野がありますが、それは必ず自分にもあるはずです。

努力して得たものはもちろん、元から持っている性格、例えば友人の話を聞くのが好き、ドライブに連れて行くのが好き……。そんな何気ないことだっていいと思います。

勉学や仕事に限らず、趣味や家庭などすべての局面において、得意なこと、自分ができることをまずは身の回りから、そして社会の中で互いに分け合い助け合うことで、充実した人生を送ることができると思います。

後輩のみなさんへのメッセージ

興味のあることがまだ見つけられていなかったり、はっきりしていなかったりしても、まずは一歩踏み出してみてください。自然豊かなキャンパスや幅広い研究分野など懐の深い環境が皆さんを温かく迎え入れてくれます。

入学した後は、ぜひたくさん勉強してください。受験勉強がやっと終わったのにまた勉強と思うかもしれませんが、興味のあることが見つかってからの自発的な勉強はとても楽しいものです。そして気力・体力・時間が揃い、こんなに全力を注いで勉強できるのは大学生の頃だけだったと社会人になってから思います。とても豊かで贅沢なひとときでした。

皆さんが一生を共にできるような、わくわくするテーマに出会えることを願っています。

(2020年9月取材)