2025.3.5

サッチャリズム前夜の〈民衆的個人主義〉

福祉国家と新自由主義のはざまで
著者名:
長谷川貴彦 編著
岩下誠 梅垣千尋 市橋秀夫 尹慧瑛 浜井祐三子 小関隆 著
文学院・文学研究院教員:
長谷川 貴彦 はせがわ たかひこ 教員ページ

内容紹介

戦後のイギリスでは「衰退」が強調される一方で、福祉国家の下で「民衆的個人主義」が花開いたとされる。民衆的アーカイヴを駆使し、戦後史の分水嶺といわれる1970年代の社会が内包していた多様な可能性について、福祉や教育、ジェンダーやセクシュアリティ、移民と多文化主義、宗教とモラリズムなどの側面から明らかにする画期的論集である。

著者からのコメント

本書では、序章と第1章の執筆を担当しました。
「民衆的個人主義」は耳慣れない概念ですが、サッチャー時代のネオリベラル的個人主義に回収されない系譜の個人主義を発見しようとするイギリスの現代的関心を反映したものです。また第1章では1970年代のロンドン・ノッティングヒル地区の住宅占拠(スクオッティング)運動を取り扱っています。長年の文書館での史料調査の成果として読んでいただければ幸いです。

 

ISBN: 9784000616867
発行日: 2025.3.5
体裁: A5判・224頁
定価: 本体価格3,200円+税
出版社: 岩波書店
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

序 章 一九七〇年代の民衆的個人主義 長谷川貴彦
第1章 コミュニティ・アクションの源流 ――ノッティングヒルのジャン・オマリー、一九六八―七五年 長谷川貴彦
第2章 教育政治の変容と新自由主義 ――ウィリアム・ティンデール校事件(一九七五年)を再訪する 岩下誠
第3章 ライフヒストリーからみたウーマンリブ運動 ――オルタナティヴな女性コミュニティの希求 梅垣千尋
第4章 ゲイ解放戦線の運動経験とそのレガシー ――「サッチャリズム」ナラティヴ再考のために 市橋秀夫
第5章 「危機の時代」の北アイルランド問題 ――バーミンガム・アイリッシュの経験から 尹慧瑛
第6章 「踊りの場」の人種差別 浜井祐三子
終 章 「許容する社会」、モラルの再興、マーガレット・サッチャー 小関隆
あとがき