内容紹介
ユーラシア大陸の住人にとって国の境とは何を意味してきたのか。障壁か、防波堤か、橋頭堡か、はたまた可能性への入口か。そしてその境界を越えた人々は何を得たのか。外の同胞との一体感か、疎外か、郷愁か。本書では、国家の境界を前提とした領域化の思考を許さないマイノリティ、モビリティ、ディアスポラ、ネットワークといった概念を軸に、揺れ動く地域大国の輪郭を様々な時空間に身を置いた人々の眼差しから描出する。
著者からのコメント
本書は、スラブ・ユーラシア研究センターが中核となった新学術領域研究「ユーラシア地域大国の比較研究」の第5班「国家の輪郭と越境」の成果です。「シリーズ・ユーラシア地域大国論」の他の巻がロシア・インド・中国という既存の国家の枠を有意味な比較の単位にしていたのとは趣を異にし、国家の枠自体と格闘する人々の営みに目を凝らし、耳を傾けるべく努めました。また16世紀から現代までを視野に収める奥行きも併せ持っています。
長い制作過程で、ウクライナ危機、「イスラーム国」の出現、ヨーロッパへの難民の流入、テロの遍在可能性など、国家の輪郭が問い直される世界史的にも重大な変化がありました。それは序章と終章に色濃く反映されています。本書から今日的な課題に対する思考の糧も得ていただければ幸いです。
外部リンク
〔出版社〕ミネルヴァ書房の紹介ページ