• 2018.03.01

露語からチェコ語へ

ロシア語学習者のためのチェコ語入門 −文法編

著者名: 浦井康男(著)
文学研究科教員:
  • ISBN:9784906770113
  • 発行日:2018.03.01
  • 体裁:PDF A4版・121ページ
  • 定価:頒布価格926円+税
  • 出版社:外研刊行会
  • 本文言語:日本語
<主要目次紹介>
1.文字と音声
2.音韻変化
3.名詞
4.形容詞
5.代名詞
6.動詞
7.副詞
8.数詞
9.前置詞
10.接続詞
11.一般チェコ語
12.変化表一覧

内容紹介

 日本のスラヴ語教育を考えた場合、一番環境が整っているのがロシア語教育でしょう。日本のロシア語教育は長い伝統を持ち、専門教育でも第二外国語の一般教養でも、それに従事する専門家の数は多く、学習の機会も大学や民間の講座などで保障されています。

語学の勉強はある意味では終わりのないもので、母語でない限り一生かかってもマスター出来ないのかもしれません。しかし一つの言語に限定すると、そこでは当たり前だと思っていた現象が、他の言語を知ることで、実際にはその言語に特有のものであったりすることがよくあります。このような点からも他の言語を知ることは、元の言語をより深く知るための手掛かりにもなるでしょう。

 

一言にスラヴ語と言っても、この語族に属する言語は20前後ありますが、それらは大きく東スラヴ、西スラヴ、南スラヴ語に分類されます。それぞれの代表的な言語は、順にロシア語とウクライナ語、チェコ語とポーランド語、セルビア語とクロアチア語などですが、それらの言語では歴史的背景、方言に対する標準語の安定性、本格的な国語辞書の編纂や文学の発達などの言語的成熟度は様々です。

 その中で西スラヴ語に属するチェコ語は、独自の文化と歴史を持った非常に魅力的な言語です。ヨーロッパと接し西欧文明の中にあったチェコは、東方のロシアとは全く異なる道を歩みました。またチェコは近世に独立を失い、チェコ語の書き言葉の伝統が途切れた時期もありましたが、「チェコ語の復活なくしてチェコ民族の復活はない」をスローガンに、チェコ語とチェコ民族の復興運動を起こして成功し、これは消滅の危機にあった他のスラヴ諸語のモデルになりました。

 

本書「露語からチェコ語へ ロシア語学習者のためのチェコ語入門 −文法編」は、ロシア語の初級文法を一通り学習した人が、チェコ語に興味を持って手を伸ばそうとした際に、これまでに習ったロシア語の知識を元に、チェコ語を学習するための手引き書です。

チェコ語はかなり難しい言語で、これを文字と発音の始めから教えると相当な量の解説が必要になり、途中で息切れしそうです。また文法変化も多様なため、従来のチェコ語の教科書はいくつかの品詞の変化を組み合わせて解説し、例えば4課では男性名詞硬変化と動詞現在変化㈵型と前置詞naを、5課では女性硬変化と現在変化㈼型と前置詞doの学習といった構成を取り、各課の終わりにそこで習った文法の練習問題が付くのが普通です。

しかしロシア語の初級文法を一通り学習し、ロシア語の発音や名詞の格変化、形容詞と名詞の文法的一致、動詞の人称変化、前置詞の格支配などが、どのようなものかのイメージを持っている人には、ロシア語文法の知識からチェコ語を類推することで、学習がはるかに効率的に進むことは明らかです。本書は、これまでの文法書の各課を一つずつ進めて、知識を積み上げて行く方法よりずっと早く、チェコ語文法の全体を見渡せるようになることを目標に書かれたものです。

 

ただその際重要なのは、ロシア語とチェコ語の相違を明確にすることで、同じ用語を使っても両者がかなり異なることはよくあります。本書では同じ文法事項や語形変化でも、ロシア語とチェコ語では、どこがどのように違うのか、またなぜそうなったのかを、出来る限り歴史的変化を基に解説し、品詞ごとに章立てしています。そのため各章ごとに練習問題を立てるのが難しく、別途「講読編」を作る予定ですが、しばらく時間がかかりそうなので「文法編」を独立してまとめたのが本書です。

著者からのコメント

本書の対象者は、比較的マイナーなロシア語学習者の中で、さらにマイナーなチェコ語に関心を持った人ですので、一般的な出版の見込みはほとんどなく、電子出版の可能性を探していました。ただこの本は読み流して終わりではなく、こまめにリファレンスで使うことを考えていますので、通常の電子出版では画面が小さく、紙への印刷も制限されるため行き詰っていましたが、その時「外研刊行会」のことを知りました。

この刊行会が扱う電子出版はpdfファイルのため、上記のような電子出版での制限はありません。またこの刊行会の巧妙なところは、pdfファイルの受け渡しとその際の決済を、ネット上でデジタルデータを扱うDLマーケット(DLmarket、ダウンロード・マーケット、以下DL)に委ねていることです。さらに受け渡しの際の著作権の問題に関しても、DLが提供する「すかし機能」(購入者名が各ページの上部に自動的に印刷される)を使って、データが「使い回しされない」対応を取ることが可能です。

一方DLからファイルを購入した方は、特別な機材は必要なく、パソコンの標準仕様に近いAdobe Acrobat Reader(無償でダウンロード可)で読むことが出来ます。さらに本の形にしたい時も、パソコンにつないだプリンターで、何ら制限なく本書全体を印刷でき、大学生協などが提供しているプリント・オン・デマンドを使えば、pdfファイルを渡すとプリントから製本までやってもらえます。

以上の諸点から外研刊行会の方針は、電子出版の問題点に対する一つの解答と考えて、本書の刊行にも利用させてもらうことに決めました。