• 2016.07.29

暗黒 〈下巻〉

18世紀、イエズス会とチェコ・バロックの世界

著者名: アロイス・イラーセク
浦井 康男(訳)
文学研究科教員:
<主要目次紹介>
暗黒 45〜76
語注
付録
訳者あとがき

内容紹介

 18世紀前半のチェコはイエズス会による再カトリック化が徹底して行われ、チェコ人が自民族とその民族文化を弾圧した歴史的に負の時代で、チェコ本国でも長い間この時代に触れるのは避けられて空白となっていた。本書はこれを扱った数少ない作品で、この時代の宗教・文化・社会の渾然一体となった状況を、立場を描き分けられた登場人物たちの交錯により、客観的かつ詳細に描出した長編歴史小説。

著者からのコメント

 本書では翻訳する際も出版する際も、インターネットが大いに役立った。以前はネットの情報の不確かさが問題となったこともあるが(事実日本のネット情報は玉石混交で手前勝手で主観的なものもが結構ある)、チェコでは専門的なものや地方の行政機関のホームページなどは、しっかりした確実なものが多い。
 本書の翻訳では、1700年代の物語なのでもちろん限界はあるが、それでも事物のイメージや説明、貴族の系図、聖人伝説、地方都市や小さな村の位置、各都市やプラハ市街の鳥瞰(ちょうかん)図や通りの様子(street viewで)、古い絵葉書によるプラハ市内の当時の建物や市門の姿、古地図、聖歌やクリスマス・キャロルなどの旋律(You tubeで)、歴史的エピソードの後付けなどにネット検索が大きな威力を発揮した。
 これまで翻訳文学というと、訳者が一方的に提供する情報(訳文と註釈)で読み進むのが当たり前であったが、本書のように事実を背景とする歴史小説などの分野では、上記の利便性を拡張して、検索のキーワードを各所に配して読者自らがネット検索をすることで、作品でのイメージを膨らましながら読み進めることが出来るように工夫した。

 また出版に際しても、本書のような馴染みのないテーマでしかも大部の作品が、現在の日本の状況で出版できるのか、また出版されても読者に受け入れられるのか全く予想がつかなかった。そこでインターネットのクラウドファンディングの場を借りて、広く一般に呼びかけて支援者を募った。そして支援を申し出た人たちに出版予定の本書を送るとそれが予約購読となり、出版の助成(広報+自己資金の補足+予約購読)が成立するのではないかと考え、自らそれを試みたが、賛同者が多数集まりこの企画は成功した。